米国における住宅ローン控除

彼がそう言った理由は、米国の制度と日本の制度との違いにあります。

米国においても、住居を構えるためにローンを組んで利子を払っている場合には、税的に恩恵を受けることができます。「Home Mortgage Interest Deduction」です。支払った借入金利子の金額が控除できるというものです。

これは日本のように借入金の元本部分から控除額を計算するのでなく、実際に支払った借入金利子の金額を控除額とするという点で日本の制度とは異なります。

さらに以下のような違いがあります。これらのほかにも細かい要件があるのですが、大きなところのみ掲載しています。
・ビフォアタックスの所得控除なので、税率適用前に、所得から控除額を引く形式(日本はアフタータックスの税額控除なので、税額から直接控除額が引かれる)
・貸し出していない限り、持ち家は2軒までOK(日本は1軒)
・住んでいる必要はない、つまり別荘でもOK(日本は住んでいる家である必要がある)
・合計所得金額の制限はない(日本はその年の合計所得金額が3000万円である個人に限られる)
・住宅ローンの元本がワンミリオンドル(約1.1億円)を超えると、控除額が逓減していく(日本は元本制限がない)

合計所得金額の制限がないため、別荘を構える高所得者であってもローン控除が取れるというのは大きな魅力です。しかし誰でも控除を取れるわけではなく、住宅ローンの元本が要件になっているのがユニークなところです。10億を超えるローンを組んで、華美な住居を構える場合などは控除の対象とはなりません。

その人の所得でなく、その人がどんなローンを組んだのかに控除可否を判定するポイントを置いています。

実はこれ、株式関連報酬が大変盛んな米国において、とても意味のある制度です。

米国において、人によっては年収の半分が、ストックオプション等を代表とする株式関連報酬というのはよくあるケースです。これはエグゼクティブであるほど、またはスタートアップ企業であるほどに顕著です。私のクライアントの場合も役付きでありましたが、年収のおおよそ半分が株式関連報酬からなるものでした。

株式関連報酬は、日米共通の原則として、権利が確定した段階で給与所得として認識されます。これは何かというと、現金を受け取っていないにも関わらず、オプション等の権利が確定した日の株価と保有株式数とを乗じたものが、あたかも同額の現金を受け取ったかのように所得認識されるというものです。現金が振り込まれていないのに、給与の額面だけ増えていくようなかたちです。もちろん権利確定の段階で、株という金融資産は増えます。しかしその資産は、売却しない限り現金化できません。

額面としての年収がおおよそ3000万円であっても、実際に手にしている現金は1500万円ほどだというケースがあるということなのです。

株式関連報酬やスタートアップ企業が増えている日本においても、この点を要件に反映させる必要があるかもしれませんね。

「まぁ、日本は利率が低いし、それくらいいいんだけどね。どうせ1.5%くらいでしょ」

はい、そのとおりです。ローンの利率、日本はとても安低いです。。

今回のケースの結論:「住宅ローン控除は誰でも申告できるわけではないので注意!」