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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:税務当局による国外情報の入手①~情報交換制度とは

経済のグローバル化の進展により、企業や富裕層による国境を越えた取引や海外資産の保有・運用形態が複雑・多様化しています。こうした動きに対応するため、税務当局は海外取引の税務調査を強化しており、国外財産等に関する情報を入手するツールを急速に整備しています。代表的なツールの一つとして、「租税条約等に基づく情報交換」があります。今回は情報交換制度の基本的な仕組みについて解説します。

「情報交換」とは、外国の税務当局との間で、調査に必要な税に関する情報をお互いに提供し合う仕組みです。税務当局は近年、この情報交換を積極的に活用し、外国の税務当局から調査に有効な情報の入手に努めています。この情報交換は大きく①要請に基づく情報交換、②自発的情報交換、③自動的情報交換の3類型があり、下の図は、それぞれのイメージを示しています。

《図 情報交換の3類型のイメージ》

(出典)財務省資料

(1)要請に基づく情報交換
海外取引の調査において、国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合などに、海外税務当局に調査に必要な情報の収集・提供を依頼し、海外当局の職員が、日本側から要請された情報を収集し、日本側に提供するものです。海外取引調査において、我が国の調査官が海外の取引先に臨場して直接必要な書類等を入手することができないため、その代替手段として、税務調査でよく活用されています。
では、この要請に基づく情報交換によってどのような情報が入手できるのでしょうか。一般的には調査に必要な情報であれば幅広く情報収集が可能と考えられています。具体的には、

・海外法人の決算書及び申告書
・海外法人の登記情報、
・契約書やインボイス等の書類
・海外の銀行預金口座情報
・海外法人における経理処理が分かる書類
・外国税務当局の調査官が、海外法人の取引担当者からヒアリングした内容

などの情報が入手されています。こうして入手された情報は、税務調査で活用されるほか、税務訴訟となった場合には国側の証拠として裁判所に提出されることもあります。
この要請に基づく情報交換は、外国に要請してから回答を受領するまでの期間が長いことが欠点とされており、かつては1年〜2年程度かかることも多かったと言われています。しかし、最近では、要請を受けてから3か月以内に回答することが国際的な目標とされており、短期間で回答を受領できるケースも増えているようです。

外国税務当局との情報交換ミーティングも開催

近年、情報交換を効果的・効率的に行うため、国税庁や国税局、税務署の職員が海外当局の担当者と直接面談し、調査事案の詳細や解明すべきポイントなどについて説明・意見交換を行う会合を実施しています。通常、情報交換は、文書のやりとりにより行いますが、文書のやり取りのみでは外国税務当局の正確な理解を得ることが困難と見込まれる複雑な事案や、特に迅速な回答が必要な事案については、このような会合を開催しています。

(2)自発的情報交換

「自発的情報交換」は、国内での税務調査等の際に入手した情報で、外国の税務当局にとって脱税の摘発等に繋がる可能性がある等、有益と認められる情報を把握した場合に、自発的に相手国に提供するものです。これは国際協力の観点から、あくまで自主的に行うものであるため、これまでは交換件数は低調でしたが、近年大幅に件数が伸びています。

(3)自動的情報交換
法定調書から把握した非居住者への支払(配当、不動産の使用料、無形資産の使用料、給与・報酬、キャピタルゲイン等)に関する情報を、支払国の税務当局から受領国の税務当局へ一括して送付するものです。
自動的情報交換により提供された利子・配当などに関する情報と確定申告書の申告内容とを照合することにより、国外資産から生ずる所得の申告漏れの把握が可能となります。

情報交換制度を活用することに把握された申告もれの事例については別の回で紹介します。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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