国税当局は、情報交換制度(要請に基づく情報交換、自発的情報交換、自動的情報交換)を積極的に活用して情報収集の強化に努めています。情報交換を活用して把握した申告漏れ事例が国税庁から公表されていますので紹介します。これらの事例を参考に、同じようなパターンの申告漏れを繰り返さないことが大切です。
外国税務当局に情報提供を要請し、その回答を基に課税した例
【ケース1】法人税調査において、日本法人が、A国法人からの輸入取引に関してA国個人Bに手数料を支払っていたが、その役務提供の事実が確認できなかった。そこで、A国の税務当局に対して、その個人Bに支払った手数料に係る事実関係の確認を要請した。その結果、日本法人が手数料として支払った金員は、架空手数料であることが判明した。
このケースでは、手数料の支払先である個人Bについての情報(例えば、個人Bは実在するか、個人Bは手数料を収入として申告しているか、個人Bは日本法人に対して役務を提供したのか等)をA国の税務当局に依頼し、その回答に基づき調査を進めた結果、手数料が架空であることを把握したものと想定されます。
【ケース2】法人税調査において、日本法人がA国の販売代理店に対して支払った手数料の一部は、B国にある銀行の「J」名義の個人口座に支払われていた。そこで、A国の税務当局に対して、その販売代理店に支払った手数料に係る事実関係の確認を要請した。その結果、日本法人が手数料として支払った金額は、当該販売代理店との取引に係る謝礼金としてJ氏に支払ったものであることが判明したことから、当該支払手数料を交際費として課税した。
【ケース3】相続税調査において、被相続人が保有するC国の金融機関の口座については、日本から多額の送金がありながら、相続人が申し立てる残高は極めて少額であったことから、C国の税務当局に対して、当該口座残高について調査を依頼した。その結果、相続開始日時点に申し立てた金額を超える残高を有していたことが判明したことから、当該残高を相続財産の申告漏れとして課税した。
情報交換制度を活用すれば、海外の金融機関の預金口座についての情報が入手可能です。
国によって法律や制度が違うため一概には言えませんが、例えば、口座開設に当たって金融機関に提出した開設届や、本人確認書類の写し、口座残高情報、預金通帳の写しなどが入手できると思われます。
外国税務当局から自発的に提供された情報を基に課税した例
【ケース4】外国税務当局から、以下の情報提供を受けた。申告内容を検討した結果、申告漏れが想定されたため、税務調査を実施し課税した。
・ 日本の居住者が海外の法人に勤務していたときに受領した報酬等に係る情報
・ 日本の居住者が行った海外資産の譲渡に係る情報
・ 日本の居住者が海外の法人に勤務していたときに受領した報酬等に係る情報
・ 日本の居住者が行った海外資産の譲渡に係る情報
日本の居住者は、原則としてすべての所得(全世界所得)に対して課税されるため、日本で稼いだ所得のみならず、海外で稼いだ所得も課税対象となります。よって、日本の居住者が海外企業から勤務の対価として受け取った報酬や、海外資産を譲渡したことによる利益は、日本で確定申告しなければなりません。海外で稼いだ所得は通常、日本の税務当局が把握するのは難しいことですが、外国当局からの自発的な情報提供によって申告漏れが明るみに出たというケースです。