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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:税務当局による国外情報の入手④~金融口座の自動的情報交換

外国の金融機関等を利用した国際的な脱税や租税回避に対処するため、OECDにおいて非居住者に係る金融口座情報を自動的に交換するための国際基準である「共通報告基準」(CRS:Common Reporting Standard)が公表されました。わが国では、この基準に対応するための法整備を進めており、平成30年以降、金融口座の情報が各国の税務当局間で自動的に交換されることとなります。


近い将来、金融口座の情報が海外の税務当局間で自動的に交換されることになり、日本人が海外の金融機関に保有している預金口座の情報が日本の税務当局に把握される時代が来るという話を聞いたことのある人は多いでしょう。今回はこの制度の概要について説明します。

海外の金融機関を利用した国際的な脱税や租税回避に対応するため、OECDは平成26年に、非居住者に係る金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準である共通報告基準(CRS:Common Reporting Standard)を公表し、G20 がこれを承認しました。

この基準によれば、各国の税務当局は、

① 自国に所在する金融機関から非居住者が保有する金融口座の口座残高、利子・配当等の年間受取総額等の情報の報告を受け、
② その情報を租税条約等の情報交換規定に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に提供します。

この取り組みが開始されれば、日本の国税当局も外国税務当局から、わが国の居住者が外国の金融機関に保有する口座情報の提供を受けることになります。

平成 28 年 11 月現在、以下の表1の通り、101カ国・地域が、平成 30 年までにこの基準に従って自動的情報交換を開始することを表明しています。

 

表1 CRS に基づく自動的情報交換の実施時期に関するコミット状況

出典:国税庁資料「国際戦略トータルプラン」

この基準に対応するため、わが国では、平成 27 年度税制改正において、国内に所在する金融機関等が口座保有者の氏名、住所、居住地国、外国の納税者番号、口座残高、利子・配当等の年間受取総額等の情報を所轄税務署長に報告する制度を導入しました。

同制度は平成 29 年1月1日から施行され、国内に所在する金融機関等は、平成 30年以後、毎年 4月 30日までに特定の非居住者の金融口座情報を所轄税務署長に報告し、報告された金融口座情報は、租税条約等の情報交換規定に基づき、各国の税務当局に提供されることとなります。

対象となる金融機関には、銀行のみならず、生命保険会社、証券会社、信託等の投資事業体も含まれます。

この基準による自動的な情報交換のイメージは図1及び図2に示した通りです。
【日本→外国】については、日本では、A国居住者、B国居住者・・・が日本の金融機関に有する口座の情報が日本の金融機関から国税庁に報告され、A国、B国・・・の税務当局に提供されます。

 

図1 共通報告基準による情報交換のイメージ 【日本→外国】

出典:財務省資料

【外国→日本】については、その逆で、日本人甲がA国の金融機関に有する口座の情報はA国税務当局を通じて国税庁に提供、日本人乙がB国の金融機関に有する口座の情報はB国税務当局を通じて国税庁に提供、日本人丙がC国の金融機関に有する口座の情報はC国税務当局を通じて国税庁に提供される、といった流れになります。

 

図2 共通報告基準による情報交換のイメージ 【外国→日本】

出典:財務省資料

わが国では、これまでも情報交換制度の中の「自動的情報交換」の枠組みを使って利子や配当の取引情報を外国税務当局と交換してきました。ただし、海外に預金や有価証券を保有していても、その年に利子や配当などのフローの所得が発生していない場合には、国税当局は海外資産に関する情報を十分に捕捉することはできませんでした。

しかし、CRS導入後は、その年の口座残高が交換されることとなるため、従来より広範囲な情報が、効果的に情報収集できることとなります。

このように、今後は日本人が海外の金融機関に保有している口座の情報が国税当局に把握されることになり、金融口座情報については世界レベルでガラス張りにしていこうという動きになっていることが分かります。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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