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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:新興国における課税の実態〜経済産業省が「国際租税制度に係る多国籍企業対応・影響等調査(平成28年度)」を公表

経済産業省より「国際租税制度に係る多国籍企業対応・影響等調査(平成28年度)」が公表されています。また、別添資料として「国際課税問題及び租税条約に関するアンケート調査」も公表されており、海外進出している日本企業が新興国で受けた課税の実態が明らかとなりました。新興国では海外企業に対して強引な移転価格課税やPE認定などの課税処分が行われることが多いようです、今回は当アンケート調査で報告された課税事例を紹介します。

新興国において課税事案が発生した国としては、中国(34%)、インドネシア(18%)、 インド(15%)、ベトナム(6%)、タイ(5%)の順となっています。また、課税事案の内容では、「移転価格税制」「恒久的施設(PE)」「ロイヤルティ」が上位となっています。

以下において、新興国において発生した課税事例を紹介します。

1 移転価格税制に関する課税事例

■みなし利益率による増額

  • 中国現地法人の利益率が不当に低いことを税務当局に主張され、みなし利益率との差について追徴課税を受けた。【中国】

 

■不適切な比較対象取引を用いた増額

  • 税務当局が選定した比較対象企業の営業利益率レンジとの差額について、その比較可能性がないのにもかかわらず、更正を受けた。【インド】
  • インドネシア子会社の利益率及び関連者取引に対するロイヤルティを否認された上、税務当局が選定した比較対象会社数社の営業利益率の中央値になるまで売上高の修正を要求された。【インドネシア】

2 PE(恒久的施設)認定に関する課税事案

■出張者・出向者のPE認定

  • 技術支援のための出張において、個々のプロジェクトは6ヵ月を超えていないにもかかわらず、PE認定を受けた。それに伴い、年に1度の出張でもいまだに納税を続けている。【中国】
  • 現地法人への技術援助・指導を行うために本社から派遣した複数の出張者の滞在合計日数が法定日数を超えたと課税当局に主張され、PE認定を受けた。【中国】

 

■駐在員事務所のPE認定

  • 駐在員事務所がPE認定され、日本・インドネシア間の貿易に対して一定の率を乗じて計算した数値をもって、PEに係る所得として認定された。【インドネシア】
  • 情報収集が主な業務である駐在員事務所において、PE認定された上で、みなし利益率により所得を認識させられた。【中国】

 

■子会社・第三者のPE認定

  • インド子会社の工場建設プロジェクトに関する役務提供取引をPE認定され、追徴課税を受けた。 【インド】

 

3 ロイヤリティに関する課税事案

  • 現地子会社が親会社に技術・商標の使用料として支払うロイヤルティについて、税務当局による「現地法人は支払の対価を享受していない」との主張のもと、支払額全額を否認された。【インドネシア】
  • 現地企業の損益が十分でない中、親会社に対してロイヤルティを支払う理由がないとして移転価格課税を受けた。【インド】
  • 本社から現地法人に販売する部品に関して、中国税関より、現地法人から本社に支払う技術のロイヤルティの中に、輸入部品の価格の一部が含まれているとの指摘を受け、現在も対応継続中である。【中国】
  • 中国子会社から日本本社に支払う技術ロイヤリティが全額否認された。技術提携契約書に基づいた適正な支払いであることを主張したが、税務調査が長期化し、業務に影響を与えかねず、税務調査を終結させる必要があったため、その課税措置を受け入れた。【中国】

これらの課税措置に対する対応としては、回答企業の約半数が現地当局による課税措置を受け入れている模様で、不服申し立てや裁判などの国内救済措置、及び相互協議などが十分に活用されていないのが現状のようです。

新興国においては移転価格課税やPE認定等を強化する傾向にありますので、新興国への海外進出を予定している企業にとっては、こうした課税リスクを十分に検討することが重要となってきます。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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