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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:税務当局による国外情報の入手⑥〜国外証券移管等調書

近年では株式や公社債をはじめとした有価証券のペーパーレス化が進み、クロスボーダーの金融取引も盛んに行われるようになったことを背景に、国境を越えて有価証券の証券口座間の移管を行った場合に調書の提出を義務付ける「国外証券移管等調書制度」が導入されました。こうして富裕層の国外財産を把握するための法定調書が拡充しています。

1 制度の趣旨

クロスボーダーの活動から生じる所得を捕捉し、適正な課税を実現するための手段として、従来は「国外送金等調書制度」や「国外財産調書制度」が活用されてきました。

しかし、近年では、株式や公社債をはじめとした有価証券のペーパーレス化が進み、クロスボーダーの金融取引も盛んに行われるようになりました。このため、現金での資金移動に加えて、有価証券の国境を越えた移管を行うことにより、有価証券の運用所得や譲渡所得を逃れる事例が散見されました。

こうした国境を越えた有価証券の移管は、国外送金等調書からは把握することができないことから、平成26年度の税制改正によって、国境を越えて有価証券の証券口座間の移管を行った場合に調書の提出を義務付ける「国外証券移管等調書制度」が設けられました。

こうして、日本と海外との間の現金の動きについては国外送金等調書により、有価証券の動きについては国外証券移管等調書により把握することが可能となり、富裕層の財産の国境を越えた移動に対する国税当局の監視が一層強化されることとなりました。

なお、この「国外証券移管等調書制度」は、平成27年1月1日以後に依頼する移管から適用されています。

2 制度の概要

金融商品取引業者等は、その顧客からの依頼により国外証券移管等をしたときは、その国外証券移管等ごとに、その顧客の氏名又は名称及び住所、その国外証券移管等をした有価証券の種類及び銘柄等の一定の事項を記載した調書 (国外証券移管等調書)を、その国外証券移管等をした日の属する月の翌月末日までに、その国外証券移管等を行った金融商品取引業者等の営業所等の所在地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

なお、国外証券移管等調書は、国外送金等調書とは異なり、その国外証券移管等をした有価証券の価額にかかわらず、すべての調書を提出する必要があります。

《「国外証券移管等調書制度」のイメージ図》

《国外証券移管等調書の記載事項》

国外証券移管等調書には、1回の国外証券移管等ごとに次に掲げる事項を記載しなければならないこととされています(国外送金等調書規11の4)。

イ その国外証券移管等をした顧客の氏名又は名称
ロ その国外証券移管等をした顧客の住所(国内に住所を有しない者にあっては、居所等一定の場所)
ハ その国外証券移管等をした有価証券の種類、銘柄及び数又は額面金額
ニ その国外証券移管等をした年月日
ホ その国外証券移管等に係る告知書に記載されている国外証券移管等の原因となる取引又は行為の内容
ヘ その国外証券移管等に係る国外証券口座を開設された金融商品取引業者等の営業所、事務所その他これらに類するものの名称
ト その国外証券口座を開設している者の氏名又は名称
チ その国外証券移管等に係る相手国名
リ その国外証券移管等に係る告知書に記載されている納税管理人の氏名及び住所(国内に住所がない場合には、居所)
ヌ その国外証券移管等に係る告知書に記載 されている法人課税信託の名称及び法人課税信託の信託された受託営業所の所在地
ル その他参考となるべき事項


《「国外証券移管等調書」のイメージ》

(出典)国税庁ホームページ

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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