仮想通貨が注目を集める中、国税当局も仮想通貨で多額の利益を得た者についての情報収集を始めた模様だ。国税庁は仮想通貨の損益の計算方法等をFAQで公表しており、仮想通貨で利益を得た者は申告漏れがないように注意が必要である。

■仮想通貨長者に監視の目

仮想通貨が資産運用手段として注目を集める中、本年1月1日の朝日新聞に以下のような注目すべき記事が掲載された。

 

仮想通貨長者 把握へ 
国税 資産分析、税逃れ防止

「ビットコイン」など仮想通貨の急激な値上がりを受け、国税当局は多額の売却益を得た投資家らの調査を始めた。数千万~数億円の利益を得た投資家らをリストアップ。2018年の確定申告に向け、取引記録や資産状況をデータベースにまとめ、税逃れを防ぐ考えだ。仮想通貨をめぐる本格的な情報収集への着手は、初めてとみられる。
仮想通貨を物品やサービスへの支払い手段として初めて認める法律が国内で施行されるなど、17年は「仮想通貨元年」と呼ばれた。時価総額1位のビットコインは、1月の1ビットコイン=10万円前後から12月は一時200万円台に、2位のリップルは年初の200倍以上に高騰。1億円以上を稼いだ投資家を指す「億(おく)り人(びと)」が続出したとの情報も出回る。

しかし、仮想通貨の売買は、両替商の役割を担う民間の交換業者を介してインターネット上で完結するため、金融機関など金の流れの把握に有効な従来の情報網を使うのは難しい。

売却益の課税漏れを懸念する国税当局は17年夏以降、売買記録データの閲覧を交換業者に依頼し、すでに一部で協力を得たという。データは東京と大阪の国税局に置かれたネット商取引の専門調査チームが主に分析し、資産状況などのデータベース化を進める。

18年2〜3月の確定申告時に提出される17年分所得を、これらのデータと照合。申告所得が少ないなど不審な点があれば、その人物と会って事情を聴き、追徴課税や脱税容疑での立件も検討する構えだ。[…]

■仮想通貨の売却益は「雑所得」に該当

ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却等したことにより生じた利益については、原則として、「雑所得」に該当し、所得が20万円を超えれば原則、所得税の確定申告が必要となる。

例えば、30万円で購入した仮想通貨が100万円に値上がりした場合、課税所得が生ずるケースとしては次のような場合がある。

  • 売却して円に換金する
  • 100万円相当の物品を購入する
  • 100万円相当の別の仮想通貨を購入する

これらのケースでは、いずれも100万円-30万円=70万円が雑所得として課税対象となる。

昨年12月には、確定申告の対象となる仮想通貨の損益やその具体的な計算方法等についてのFAQが国税庁から公表された。FAQでは、所得金額の計算方法などが全9問に渡りQ&A形式で示されているのでぜひ、内容を確認しておきたい。

■仮想通貨を売却した場合

例えば、3月に4ビットコインを200万 円で購入し、5月に0.2 ビットコインを 11万円で売却した場合、所得はどのように計算するのだろうか。

保有する仮想通貨を売却した場合には、その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となる。

上の例では、売却した0.2 ビットコインの取得価額は、200万 円×0.2/4=10万円となるので、所得金額は11万円-10万円 =1万円と計算される。

■仮想通貨で商品を購入する場合

仮想通貨で商品を購入した場合も同様に計算する。例えば、3月に4ビットコインを200万 円で購入し、9月に15万5千 円の商品を購入するために0.3 ビットコインを支払った場合はどうなるだろうか。

保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合には、その使用時点での商品の価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となる。

上の例では、商品の購入に使用した0.3 ビットコインの取得価額は、200万円×0.3/4=15万円となるので、所得金額は15万5千 円-15万円 =5千円と計算される。

 

■仮想通貨と仮想通貨を交換した場合

保有する仮想通貨を使用して他の仮想通貨を購入(仮想通貨と仮想通貨の交換)する場合もある。

例えば、3月に4ビットコインを200万 円で購入し、11月に他の仮想通貨を購入(決済時点における他の仮想通貨の時価は60万円)し、1 ビットコインを使用した場合である。

保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合には、その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と、保有する仮想通貨の取得価額との差額が、所得金額となる。

上の例では、1ビットコインの取得価額は、200万 円×1/4=50万円となるので、所得金額は60万 円-50万円 =10万円と計算される。

■仮想通貨の取得価額

同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合の仮想通貨の取得価額の算定方法については、原則、移動平均法によることとし、継続適用を要件に、総平均法を用いても差し支えないとされている。

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