所得税の確定申告書の提出先は、確定申告書を提出する際の納税地を所轄する税務署長となっています。納税地は原則として住所地となりますが、非居住者は通常、日本国内に住所又は居所を有していませんので、納税地の判定には注意が必要です。

個人の納税者が日本国内に住所を有しない場合は、申告と納税については納税管理人を定めることとされています。納税管理人を定めた場合、税務署から発送される書類は納税管理人の住所地に届きます。では、確定申告書を提出する場合、どこの税務署に確定申告書を提出すればよいのでしょうか。

非居住者の納税地については、次の順番で納税地の判定を行い、当該納税地を所轄する税務署長に所得税の確定申告書を提出することとなります。納税管理人の住所地ではないことに注意が必要です。

 

(1)事務所等の所在地

国内において行う事業に係る事務所等を有する場合は、その事務所等の所在地が納税地となる。

 

(2)納税地とされていた住所又は居所

(1)以外の者で、その納税地とされていた住所又は居所にその者の親族等が引き続き、又はその者に代わって居住している場合には、その納税地とされていた住所又は居所が納税地となる。

 

(3)貸付けの対価に係る資産の所在地

(1)及び(2)以外の場合で、国内にある不動産の貸付け等の対価を受ける場合には、その貸付けの対価に係る資産の所在地(その資産が二つ以上ある場合には、主たる資産の所在地)が納税地となる。

 

(4)直前の納税地

(1)~(3)により納税地を定められていた者が、そのいずれにも該当しないこととなった場合には、その該当しないこととなった時の直前において納税地であった場所が納税となる。

 

(5)納税者が選択した場所

(1)~(4)以外で、その者が国に対し所得税の申告及び請求等の行為を行う場合には、その者が選択した場所が納税地となる。

 

(6)麹町税務署の管轄区域内の場所

(1)~(5)のいずれにも該当しない場合には、麹町税務署の管轄区域内の場所が納税地となる。

 

なお、課税庁においても納税地の判定は重要となります。納税地を誤った管轄外の税務署長の処分は、処分権限のない税務署長による処分となってしまうことから、税務署長が更正処分や加算税の賦課決定処分等の課税処分を行うときは、納税地を慎重に見極めて行うことになります。

 

【ケース1】

私は、東京都渋谷区の自宅に居住していましたが、2017年9月に2年間の予定で米国勤務となりました。東京都中央区にマンションの一室を保有しており第三者に賃貸しているため、今後も確定申告が必要です。これまで居住していた渋谷区の自宅には親族が引き続き居住しています。納税地はどこでしょうか?

(回答)
このケースでは、上記(2)に該当するため、これまで納税地とされていた東京都渋谷区の自宅の住所が納税地となります。

 

【ケース2】

私は、東京都新宿区の自己所有のマンションに居住していましたが、2017年9月に3年間の予定で韓国勤務となりました。出国前に新宿区のマンションを売却し家族とともに出国しました。私は、神奈川県横浜市にマンションの一室を保有しており第三者に賃貸しているため、今後も確定申告が必要です。納税地はどこでしょうか?

(回答)
このケースでは、上記(3)に該当するため、貸付の対価に係る資産の所在地である神奈川県横浜市のマンションの住所が納税地となります。

 

【ケース3】

私は、シンガポールに居住しています。かつて取得した日本国内にある土地を今年、日本の法人に譲渡しました。この土地の譲渡について日本で確定申告する予定です。私は日本国内に住所や居所はなく、土地売却後は日本国内に資産等はありません。納税地はどこでしょうか?

(回答)
このケースでは、上記(5)に該当し、任意に納税地を選択できることとなります。ただし、納税地を選択しない場合には、(6)により、麹町税務署の管轄区域内の場所が納税地となります。

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