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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:国外関連者に対する寄附金③ 出向者に対する給与負担

海外子会社への出向者に対する給与の一部を親会社が負担することは実務上よく行われます。親会社の負担額が海外子会社との間の給与の較差を補てんするためのものであれば、親会社の損金に算入されますが、親会社の負担額が過大な場合には税務調査で寄附金課税を受ける可能性があります。

『Q:当社は精密機械部品の製造業ですが、アジア地域に製造子会社を設立し、当社の従業員を出向させる予定です。海外子会社では、現地の物価水準等に基づいた給与を支給するため、これまでより給与の額は下がる見込みです。その格差を是正するため、日本親会社が給与格差を補てんすることを考えていますが、税務上問題はありますか。』

 

(1)親会社による給与較差補填

親会社の社員が海外子会社に出向し、出向先の海外子会社で業務に従事する場合、その社員の給与は、全額海外子会社で負担するのが原則である。しかし、アジア地域などでは、日本と現地の給与水準に較差があるケースがほとんどであるため、親会社が海外子会社との間の給与の較差を補てんするために支給した金額については、親会社において損金に算入されることになっている(法人税基本通達9-2-47)。


9247 (出向者に対する給与の較差補填)

出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するため出向者に対して支給した給与の額(出向先法人を経て支給した金額を含む。)は、当該出向元法人の損金の額に算入する。

(注) 出向元法人が出向者に対して支給する次の金額は、いずれも給与条件の較差を補填するために支給したものとする。

  1. 出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため出向元法人が当該出向者に対して支給する賞与の額
  2. 出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額

 

したがって、海外子会社で勤務する現地採用の社員の中で、出向社員と同様の業務を遂行し、同程度の役職の社員の給与相当額を海外子会社で負担し、較差部分を日本の親会社が負担している場合には、親会社の負担額は損金に算入されることになる。

もし、海外子会社が負担すべき出向社員の給与を親会社が全額負担した場合には、その負担額は「国外関連者に対する寄附金」とされ、損金不算入となる。親会社が負担する金額が、給与較差の金額を超えている場合や、親会社の負担額に明確な根拠がない場合も、寄附金と判断される可能性が高いといえる。

海外子会社で出向者と同じ職位の社員がいない場合には、同じ職位の社員を海外子会社が現地で採用したとした場合の給与を算定し、その給与の額との差額を親会社が負担するようにする必要があろう。

税務調査において寄附金課税を受けないためには、出向契約書等に給与の負担関係を明記する、現地採用者の給与テーブルを作成する、現地での給与水準を説明できる公的なデータを準備する、といったことを通じて親会社が負担する較差補填金の額が過大ではないことを説明できるようにしておきたい。

また、近年、日本企業が進出しているアジア地域では人件費が上昇傾向にある。現地の給与水準が上昇している場合には、給与格差は年々縮小していくことになる。このような状況下で、日本親会社が過去に設定した給与較差補填の額を負担し続けていると、較差補填が過大であるとの指摘を受けかねない。現地の給与水準を定期的にチェックし、較差補填の額を見直していくことが必要であろう。

 

(2)留守宅手当

法人税基本通達9-4-27(注)2において、「出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額」も較差補填のために支給したものと認められるとしている。実務上、海外出向者に対して現地の給与水準に基づく給与の額を海外子会社から支給し、較差の補填部分を留守宅手当として日本の銀行口座に振り込むといった方法がよく採用されている。

法人税基本通達では、留守宅手当としていくらまでなら認められるかということには触れられていないが、留守宅手当の名目で支給すればいくら支給しても認められるという訳ではない。海外子会社において現地水準の給与を負担した上で、留守宅手当の額を決めるべきであろう。

「留守宅手当」の額が過大と判断された場合には寄附金課税される可能性がある。留守宅手当の金額の具体的な算定根拠が定められていない場合や、単に出向者の給与の額の50%を留守宅手当とすると決めたような場合も寄附金課税のリスクがある。

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租税調査研究会事務局
tax@zeimusoudan.biz

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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