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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:非居住者① 「居住者」と「非居住者」の区分

経済のグローバル化に伴い、日本で働く外国人社員や海外の現地企業で働く日本人社員が増加するなど、海外との人的交流も活発化しています。外国人社員や海外勤務者に対する課税の仕組みを理解する上で最も基本となるのは、個人を「居住者」と「非居住者」に正確に区分することです。

1 居住者と非居住者の区分

所得税では、個人の納税義務者を「居住者」と「非居住者」に区分し、更に居住者を「永住者」と「非永住者」に区分しています。

居住者であれば、原則として国内外のすべての所得に対して所得税が課税されますが、非居住者であれば、日本国内で生じた所得(国内源泉所得)のみ課税されます。このように、居住者に該当するか、非居住者に該当するかによって、課税される所得の範囲などが異なるため、「居住者・非居住者」の判定を正確に行う必要があります。

2 居住者・非居住者の判定

(1)居住者とは

居住者とは、①国内に住所を有する個人、又は②国内に現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。

この居住者は、更に「非永住者」と「永住者」に区分されます。

イ 非永住者
非永住者とは、居住者のうち日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。

ロ 永住者
永住者とは、非永住者以外の居住者をいいます。したがって、居住者のうち日本の国籍を有する者又は、日本の国籍を有しない者で過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間が5年超の者が該当します。

(2)非居住者
非居住者とは、居住者以外の個人をいいます。

以上を図解すると次のようになります。

■居住者・非居住者の判定を誤り、多額の追徴課税を受けた事例も・・・

以下の事例は、新聞等で報じられた申告漏れ事例です。これらのケースでは、いずれも海外移住し、「非居住者」としての申告をしていましたが、税務調査の結果「居住者」と認定され、多額の追徴税額が発生したものです。


香港移住で税回避 10億円告漏れ(2014年5月24日 朝日新聞)
自動車部品メーカーであるA社のB会長が東京国税局の税務調査を受け、2011年までの3年間で約10億円の申告漏れを指摘されたことが分かった。B会長は香港に移住したとして日本で申告しなかったが、国税局は生活の本拠地は日本にあると認定したとみられる。
関係者や税理士によると、会長は08年に東京都内から香港へ転居し、住民票を移した。A社から受け取る報酬や株の配当は日本で源泉所得税を納めていた。しかし、海外子会社から得た報酬などについては、海外に居住しているとして、国内での申告は必要ないと判断したという。
これに対し、国税局は、会長が頻繁に香港と日本を往復しており、日本での滞在日数が香港を上回ったことなどから、生活の本拠地は日本で、国内で申告すべきだったと認定したという。


所得20数億円申告漏れ 東京国税局が指摘(2015年2月4日 時事通信)
工業用接着剤製造大手C社のD元会長が、東京国税局の税務調査を受け、2013年までの5年間で所得計約20数億円の申告漏れを指摘されたことが4日、分かった。「海外居住」を理由に申告していなかったという。
関係者によると、D元会長はC社のシンガポールや香港など複数の海外子会社から、役員報酬として毎年計約2億~5億円を受領していたが、海外居住者に当たるとして、日本で報酬を申告していなかった。

しかし、国税局が調査した結果、日本に1年の半分以上滞在していたことが判明。国税局は生活の本拠は日本にあると認定し、報酬は日本で申告する必要があると指摘、元会長が既に海外で納税した分を差し引いて追徴したとみられる。


 

住所や居所が日本国内にあるか否かの判定は課税上大変重要です。単に、滞在日数、住民登録、在留資格等により形式的に判断できるものではなく、その者の職業、住居、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することとなります。よって、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、日本の居住者となる場合があり得ます。

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租税調査研究会事務局
tax@zeimusoudan.biz

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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