経済取引の国際化に伴い、税務署が所管する法人においても国境を跨る取引を行う法人は増加しています。そのため、税務署でも国際取引を専門に調査する部署の充実を図っています。今回は東京国税局管内の税務署の法人課税部門で国際取引を担当する部署を紹介します。

税務署の法人課税部門において国際取引を専門で調査する部署として次の部署があります。

1 特別国税調査官(国際担当)

特別国税調査官(通称「トッカン」)は、大規模署では5人から10人程度配置されており、主に売上規模の大きい法人の調査を担当しています。近年、東京局管内の大規模署には国際担当の特別国税調査官が設置されており、国際取引の高度化、複雑化に対応するため、主に大規模かつ複雑な国際的租税回避スキームや移転価格上の問題が想定される海外取引法人の調査を実施しています。国税局の調査部等で移転価格調査等の国際取引調査を長年経験したエキスパートが配置されているようです。

2 国際税務専門官(法人税等担当)

国際税務専門官(法人税等担当)は、比較的規模の大きい税務署に配置されており、国外関連者を有する法人で移転価格税制、タックスヘイブン対策税制、過小資本税制、国外関連者に対する寄附金など、国際課税に関する非違が想定される法人、国際的租税回避スキームが想定される法人、海外取引を利用した不正計算が想定される法人などを分担しています。近年では、国税局で移転価格調査などを経験した者が人事交流で税務署の国際税務専門官に配属されており、税務署においても移転価格調査が積極的に行われるようになってきています。

また、国際税務専門官は、国際税務専門官が配置されていない中小規模の税務署の国際事案の調査支援も行っています。

3 国際税務専門官(源泉所得税担当)

国際税務専門官(源泉所得税担当)は、非居住者や外国法人に対する支払(非居住者等所得)について、源泉所得税の観点から 重点的かつ深度ある調査を行っており、東京国税局管内では、麹町署、京橋署、芝署など大規模署に配置されています。また、資本金1億円以上の国税局調査部の所管法人の源泉調査についても税務署の国際税務専門官が担当しています。

近年では、非居住者等に対する工業所有権の使用料の支払について、源泉徴収を行っていなかった事例が多く見られています。非居住者に対する課税は、源泉所得税が最後の課税手段となることから、源泉課税の重要性は高いものといえます。

4 国際部門

国際部門は、海外取引を利用した不正計算が想定される法人等を分担しており京橋署、芝署、麻布署、渋谷署といった都内の中心署に設置されています。また国際部門では国際取引の研修を受講した若手職員も配置されており、国際課税に精通する職員を育成する役割も担っているようです(職員名簿上は、「法人課税第○部門」と表示されています)。

★調査官の職歴もチェックしよう!

税務調査の事前通知があったら、担当調査官の過去の経歴くらいは把握しておきたいものです。もし、国税局調査部で移転価格の調査経験が豊富な者であれば、移転価格を中心とした調査が展開される可能性が高いといえ、国税局の資料調査課や査察国際課などの経験が長い者であれば、海外取引を利用した不正の把握に重点が置かれるかもしれません。調査手法や調査の着眼点は、その人の過去の経験による部分が大きいものです。それによって、事前準備の仕方も変わってくると思います。

過去の経歴を探る上で、便利なものとして税経から出版されている『10年職歴』があります。過去10年間の異動履歴が掲載されていて、過去の経歴が一目瞭然となります。担当調査官の過去の経歴を分析し、調査の傾向を予測することも重要な税務調査対策の一つです。

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租税調査研究会事務局
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