国税庁は、平成28事務年度の「相互協議の状況」について発表しました。それによると、1件当たりに要した平均的な期間は29カ月で前年より約3カ月延びています。また、アジア諸国を始めとするOECD非加盟国との相互協議は増加傾向にあり、繰越事案は過去最多となりました。

移転価格課税等を受けることにより、国際的な二重課税が発生した場合、租税条約の規定に基づき外国税務当局と協議して二重課税の解消を図る手続きが相互協議です。また、納税者の予測可能性を高め、移転価格税制の適正・円滑な執行を図る観点から、事前確認に係る相互協議も実施されています。

■相互協議の発生は162件

相互協議の発生件数は162件で前年より33件減少しました。そのうち事前確認に係るものが131件と約8割を占め、移転価格課税・恒久的施設(PE)や源泉所得税に関するものは31件でした。

 

【図1:相互協議事案の発生件数の推移】

■平均処理期間は29.1カ月

1件当たりに要した平均的な期間は、29.1カ月(前年度:26.0カ月)で、そのうち事前確認に係るものは、28.9カ月(前年度:25.7カ月)、移転価格課税・恒久的施設(PE)や源泉所得税に関するものは、30.2カ月(前年度:27.2カ月)でした。いずれも処理期間は3カ月以上延びていることが分かります。

■繰越件数は4年ぶりに減少

平成28事務年度は4年ぶりに処理件数が発生件数を上回り、同年度末の繰越件数は前年度末に比べ減少しました。ただし、繰越件数自体は456件と、過去10年で2番目の多さとなっています。繰越事案を国別にみると、米国(25%)、中国(20%)、韓国(9%)、インド(9%)、英国(8%)の順となっています。

 

【図2:相互協議事案の繰越件数の推移】

なお、平成28事務年度末の繰越事案の相手国・地域については、次の通りとなっています。

■OECD非加盟国の繰越件数は過去最多

OECD非加盟国との相互協議については、発生件数は41件、処理件数は28件、繰越件数は過去最多の178件となりました。 この繰越件数(178件)は、相互協議事案の繰越件数(456件)の約4割に当たります。

アジア諸国を始めとする新興国の中には、外国資本の企業に対して移転価格課税をするケースも増えてきており、OECD非加盟国との相互協議事案の増加に繋がっていると思われます。

1件当たりの平均的な処理期間は、36.9カ月、そのうち事前確認に係るものは、37.3カ月、移転価格課税その他に係るものは、35.9カ月と、全体的な平均処理期間に比べるとかなり長くなっています。OECD非加盟国では、相互協議を行うための体制整備が不十分であるなど、効率的な協議が困難な点が多いと言われており、処理期間も長期化する傾向があります。

■独立企業間価格の算定方法はTNMMがトップ

処理事案における独立企業間価格の算定方法の内訳をみると、企業にとって使い勝手が良いとされるTNMM(取引単位営業利益法)が最も多く、98件と半数以上を占めました。

 

【図3:独立企業間価格の算定方法内訳】

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