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【BIPA】労務手続・労務管理を自動化 3分の1に業務短縮事例も~SmartHR 宮田昇始社長~

2015年11月のリリース以来、人事労務担当者の業務効率を向上させるツールとして注目されているクラウド人事労務ソフト「SmartHR」。全ての労務手続きの自動化を目指しており、年末調整業務も効率化させた。すでに登録企業者数は1万社を超える。同クラウドシステムを提供する株式会社SmartHR(東京・千代田区)の宮田昇始社長に商品概要からサービスの今後などについて話を聞いた。

株式会社SmartHR 代表取締役CEO 宮田昇始 2013年に株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2015年11月にクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を公開し、利用企業数は1万社にまで拡大。IVS、TechCrunch Tokyoなどで優勝。HRアワード最優秀賞、グッドデザイン賞、東洋経済すごいベンチャー100にも選出。

──クラウド型の人事労務ソフト「SmartHR」を開発された経緯をお聞かせください。

2013年にITベンチャーを立ち上げて2年が過ぎたころ、まだ会社の核となる事業がなかったため、新しいビジネスの種を血眼になって探していました。そのタイミングで妻の出産があり、産休や育休の手続きの煩雑さを目の当たりにしたとき、この分野のITソリューションが進んでいないことに気付き、ここに潜在ニーズがあるのではないかと考えたのがきっかけでした。

また私自身、過去に難病を患い、車いす生活を送っていた時期があるのですが、傷病手当金の受給という形で社会保険制度に救われた経験をしており、これは自分がやるべき事業ではないかと直感したんです。それで入念にユーザーヒアリングを行ないながら内容を固め、2015年11月にサービスを開始しました。

──「SmartHR」の具体的なサービス内容について教えてください。

人事労務の手続きを簡単にする、クラウドツールです。コンセプトは「煩雑なペーパーワークをなくして本業に専念していただく」こと。開発にあたり、約200社を回ってリサーチさせていただいたのですが、人事労務の分野は私が想像していた以上にアナログの世界でした。「ハローワークに行ったら2時間待たされた」などはザラで、他にも年金事務所や健康保険組合などいろいろな役所に出向く必要があったり、各種書類に手書きをしてハンコが必要なうえ、記入自体も難しいものが非常に多い。こうした問題をクラウド上で解決するために、「SmartHR」を作りました。

基本的には、従業員本人がスマホやパソコンから、必要事項を画面通りに入力していくことで、各種労務関係書類が自動作成されます。手書きと違って専門知識がなくても簡単に書類が作成でき、手間や時間を大幅に削減できます。
また、社会保険・雇用保険などの労務手続きをWebから申請できるので、 役所への移動時間を大幅に削減できます。つまり今まで半日かかっていたような作業が、ほんの数十秒で終わるのです。これらの書類作成や電子申請以外にも、従業員のデータベース化やWeb上での給与明細の配布、スマホを用いた年末調整など、人事労務系の業務領域を幅広くカバーしています。

──実際に導入することで、業務時間はどれほど短縮されるものなのですか。

すでに導入している企業の実例を挙げると、人事労務にかける時間が約3分の1に減ったそうです。人事労務担当者は、生み出された時間で、会社全体の働き方改革について検討を進め、フレックスタイムの導入やリモートワークを実現したそうです。実に約6割の社員の生産性向上に寄与したそうです。「こうした業務こそ、われわれ人事労務担当者が取り組みたかった仕事」ととても喜んでいたそうです。

また、ある社労士さんの事例では、一般的に一人あたりが抱えられるクライアントは15社といわれているのですが、「SmartHR」の導入により顧問先を50社まで増やすことができ、収益は3倍になったそうです。
この2つの事例が特別というわけでなく、他にもさまざまな事業所様から業務改善に成功した声をいただいております。正直、私が想像していた以上に、いい効果を生み出せていると感じています。

──単なる業務効率化にとどまらず、その副産物として組織が好転していくわけですね。無料プランもあり、すでにかなりの導入実績もあるとか。

サービス開始から2年2カ月で、1万件を超えました。クラウド労務管理ソフトのなかでは、登録企業数はおそらく最も多いと思います。特徴的なのは、99.7%という継続利用率。退会しづらくしているわけでは全くないので、この数字は単純に便利に感じていただけていることの表れだと感じています。

導入企業としては、当初はIT企業を中心に広まり、最近では飲食・小売り・カラオケ・居酒屋といった各種チェーン店を運営する企業様の利用も増えてきました。特に大手チェーンだと何百店舗もあるうえにアルバイトスタッフの入れ替わりも激しく、ペーパーレス化ができないかという声も多数いただいたことから、今年の夏からは新たに「雇用契約締結機能」も追加する予定です。

──利用料金について教えてください。

料金プランは従業員数5名までが無料、30人規模で月々1万円くらいの費用感なのですが、今年の4月からは従業員数10名までなら無料、それ以上は一従業員につき550円に改定しました。

──10名まで無料なら、会計事務所でも試しに使うところは増えそうですね。そして、そこで使い勝手の良さが認知されれば、顧問先の中小企業にも利用の輪が広がりますね。

人数の少ない中小企業だと、社会保険や雇用保険などの書類作成がどうしても後回しになりがちですが、手続きの抜けや漏れによって本来なら受けらるはずの社会保障が受けられなくなったら大問題なので、無料で使える従業員数の上限を5名から10名に広げました。まずはさまざまな規模、業種の方々に、広く使っていただけたらと考えています。

──人事労務の業務ソフト自体は以前から少なからずあったと思いますが、それらはなぜ普及しなかったとお考えですか。

これまでも人事労務ソフトはあるにはあったのですが、それを、企業向けにカスタマイズして導入するとなると何十万円、何百万円とかかり、中小企業には導入のハードルが高すぎました。そのなかで弊社のサービスはクラウドなので費用を月に数千円~数万円と安く抑えることができ、なおかつ使い勝手がいいという部分が、クライアントに支持されている点だと思います。

使用感については、私は以前にIT企業でWebディレクターをしていたこともあり、使いやすさを重視しています。例えば昔のファミコンやスーパーファミコンのソフトには、必ず厚めの説明書が付いていて、一通り目を通したあとに画面と見比べながらプレーしてようやく操作を理解するのが普通でした。一方で今のスマホゲームは、ゲームを進めながらゲームシステムが理解できたり、操作方法が自然に身につくように設計されています。それくらい今と昔では、使い方に対する考え方や基準が変わってきています。使いやすくなければ選ばれない時代でもありますから、「SmartHR」を開発するにあたりその部分は当然意識しました。

──今後の展開についてお聞かせください。

給与計算や勤怠管理など、世の中に星の数ほど製品が出回っている分野には、進出する予定はありません。どのソフトも70点くらいの使いやすさがあるなかで、我々がすごく頑張って80点の製品を出したところで、生み出す価値は小さいからです。ただ、現在はマネーフォワードさんの給与計算ソフト「MFクラウド給与」とシステム連携を図っており、今後はこうした連携先を増やしていければと思います。

一方で人事労務のソリューションは未開拓分野であったがゆえに、いわば便利さが10点くらいしかないところに70点くらいの製品を投入したことで、非常に便利だと感じていただくことができました。ですから今後も、いまだに手書きやハンコ、郵送などでやり取りするような紙主体のワークフローに目をつけ、それらを一つひとつ便利にできるソリューションを生み出していきたいと考えています。

さらに今後は、人事評価サービスとの連携や、生命保険など金融業界との協業の可能性についても視野に入れています。たとえば、年末調整の書類作成時に所得や扶養家族の有無、加入している保険などの情報が分かるので、もっとその人に適した保険があればアラートで表示するというようなことは、AIを用いれば具体的に実現できそうです。

それと今のソフトウェアは、昔のようにパソコンにインストールするのではなくクラウドサービスなので、顧客の利用状況やデータを正確に把握することが可能です。言い方を変えれば、昔に比べて格段にソフトウェアを改善しやすい状況でもあるので、これからもさらなるユーザーインターフェースの向上に努めていきます。

株式会社SmartHR
代表取締役CEO
宮田昇始

2013年に株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2015年11月にクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を公開し、利用企業数は1万社にまで拡大。IVS、TechCrunch Tokyoなどで優勝。HRアワード最優秀賞、グッドデザイン賞、東洋経済すごいベンチャー100にも選出。

■株式会社SmartHR
https://smarthr.co.jp/about

著者: KaikeiZine編集部

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