掛け売り決済における「与信管理」から「請求書発行」、「代金回収」まで、すべての請求業務を代行するアウトソーシングサービス「Paid」。請求の手間や未回収リスクを削減できるため、導入を検討する中小企業が増えている。株式会社ラクーン(東京・中央区)の石井俊之取締役副社長とPaid事業推進部の及川部長に、「Paid」の詳細や今後の事業展開について話を聞いた。

――「Paid」のサービス概要についてお聞かせください。
石井 BtoBの取引においては、取引先の与信管理をはじめ、請求書発行、代金回収などの業務が発生しますが、「Paid」は代金回収におけるすべての請求業務を代行するサービスです。
従業員の少ない中小企業においてはとくに、請求業務からの解放は、営業活動に専念できるなどのメリットもあり、業務の効率化などの面から導入いただくことが非常に多いです。請求業務・代金回収の専門サービスなので、自社で対応するより、未回収リスクの削減につながります。仮に取引先から回収できなかった場合でも、Paidが保証して100%代金をお支払いします。
「Paid」の利用にあたって行ってもらうことは、ただ請求先データを送ってもらうだけ。初期投資はまったく必要なく、かかる費用は取引で生じた額の1.9~3%の手数料だけなので、導入に当たってのリスクもありません。
「自社内での取り組みが「Paid」誕生のキッカケに
――そもそも、どのような経緯で「Paid」は誕生したのですか。

石井 弊社は2002年から「スーパーデリバリー」という、楽天市場の企業版のようなBtoB向けの卸サイトを運営しています。サービス開始当初の決済方法は、代引きのみで、お客さまから「掛け売り決済にも対応してほしい」という要望が多く寄せられました。そこで、2004年ごろから、掛け売り決済をサービスに組み込んだところ、売り上げも顧客満足度も一気に上がったのです。
「スーパーデリバリー」での取組・経験により、中小企業に対する与信管理・判断などのノウハウが溜まっていきました。そこで、このノウハウを自社内だけに留めるのではなく、困っている企業に対してもサービスとして提供できないかと検討しました。そして、「スーパーデリバリー」の掛け売り決済業務だけをスピンアウトさせる形で、対外的な新しいソリューションとして2011年に始めたのが「Paid」です。現在は約2800社に導入いただいております。
――導入している企業の特徴などはありますか。たとえば、業種が似ているとか、企業規模が中規模以下とか。
及川 業種を問わず、あらゆる企業にご利用いただいておりますが、その中でも、ECサイトを運営する企業が全体の3~4割を占めています。
もちろんインターネットを介さない、対面型のリアルな取引でも「Paid」をご利用になる企業は増えており、起業したての新設法人も少なくありません。
導入している企業規模は、小規模から上場企業まで幅広いのですが、大企業の場合だと、全社を挙げてではなく、新規事業の立ち上げなどで、これまでに取引のなかった事業者と取引をしていく際に、その部門だけでご利用いただく場合が多いです。
たとえば、某自動車メーカーなら、電気自動車の充電代金の決済にのみ、ご利用いただいております。
――ネット上の取引が増え続ける昨今、類似するサービスも出始めていますが、そのなかで「Paid」の強みはどのような点ですか。
石井 与信判断のスピードと、精度の高さでしょう。一般的に与信判断をするに当たっては、新たに取引しようとしている企業から決算書をいただくほか、場合によっては調査会社に企業の調査をお願いします。そのため、与信判断に1~2週間かかることも少なくなく、新規取引先になる可能性にあった良き縁を不意にしてしまうこともありました。
しかし「Paid」なら、最長でも2営業日以内に与信判断が可能です。これは、2004年から積み上げてきた弊社の与信ノウハウがなせる技。年間約7万件の与信審査をしていることから、年々、与信審査の精度は高まり、ノウハウとして蓄積されています。スピードをさらに早めるために、1月からAIによる与信審査を始めています。見込みでは、今後はAIによる与信審査だけで、数秒で1千万円までの与信判断ができるようになると思います。