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愛人に財産を残したい! 迷える社長さんのためのスキーム

特殊関係者。あまり耳慣れない言葉ですが、国税当局は、いわゆる愛人もこの特殊関係者に含めています。愛人の生活費を負担していれば、課税問題も発生してきますし、もし、資産の一部を残したとなれば、相続・贈与税にも関係してきます。とはいえ、「実は本妻よりもお世話になった」「愛人として囲っていたがゆえ、結婚には難しい時期まで独り身にしてしまった」などの理由から、財産の一部を残す社長は少なくありません。遺言による財産分与ということもあるようですが、相続税対策などの資産移転スキームに詳しい税理士の話では、最近は保険活用が注目されていると言います。

「愛人に財産を残したい」と言われた

税理士Aと長い付き合いのB社長。B社長は一代で年商数十億円まで会社を発展させました。そのB社長もそろそろ70代前半になり、自分の老い先が長くないことを真剣に考え始め、A税理士にこう切り出したと言います。
「そろそろ事業承継と相続対策を真剣に進めたい。それにあたって、長年身の回りの周りの世話をしてくれた女性にお金を残してあげたい」
親族でもない人にお金を残すのは、相続発生後にもめることが多いため、A税理士は断りたかったが、長年の付き合いから断ることができず、しぶしぶ引き受けることにしたそうです。

活用すべきは「変額個人年金保険」

そもそもこのB社長、愛人のことは家族には話をしていません。そして出来ることなら、このまま家族には知られないで済ませたいと思っています。その一方で、お金は愛人に残したいと思っているのですから、虫の良い話です。相続財産の一部をいじったら、まず家族・親族に愛人の存在がばれます。どのようにお金を渡すべきか、かなり思案したといいます。

基本的に、相続シーンの資産移転で頻繁に活用されるのが生命保険です。A税理士はこの保険を活用してよいスキームがないかを考えました。まずB社長の年齢で加入できる保険でないといけません。そこで思いついたのが「変額個人年金保険」を利用です。

「変額個人年金保険」は、簡単に言えば、保険と投信(投資信託)、年金の働きを合わせ持った商品です。毎月一定額ないしは一時払いで掛金を払込み、一定の据置期間の後、年金等に変えることができます。据置期間は最長30年程度。高齢であっても保険会社の審査にパスできる可能性が極めて高いです。これならBさんも利用することができそうです。また、「変額個人年金保険」は相続財産にならないため、受取人以外の相続人から遺留分減殺請求を受ける恐れがありません。

愛人に残すお金は相続人に分からないように

Aさんはさっそく、Bさんに「変額個人年金保険」のへ加入を勧めました。ある一つの約束を守ることを条件に。それは、本妻や嫡子も同じ保険会社の同じ保険に加入させておくことです。
「変額個人年金保険」は「保険」であるため、被相続人の死亡によって保険金が支払われます。つまり、保険会社による死亡確認が必要なのです。もしも愛人が保険会社に死亡届を出すことになれば、愛人の存在そのものや財産の一部移譲がばれ、トラブル発生はまぬがれません。しかし、本妻や嫡子が同じ保険に加入していれば、親族が保険会社に死亡届を出すため、愛人は手続き上のトラブルを回避することができます。

相続税の節税とは関係ありませんが、今回の社長からの依頼はかなり知恵を絞りました。社長との長い付き合いを考えると、愛人のことまで話してくれた気持ちにはなんとか応えたい。相続・資産税対策に強い税理士も、綺麗ごとだけで仕事はできないようです。

著者: 租税調査研究会事務局

一般社団法人租税調査研究会

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