1年で最も税務調査が行われる「調査シーズンは」は8月から年末にかけて。実際の調査シーンにおいては、調査官から申告内容の誤りを指摘されたとき、「修正申告」やら「更正の手続き」などの言葉が飛び交う。一体、どういった違いがあるのだろうか。

知人が社長の会社が税務調査で申告内容の誤りが指摘され、調査官から修正申告を奨励されたという。調査では、誤りの内容、金額、課税処分の理由などが説明されたのだが、知人の社長はどうもその処分に納得できない。すると顧問税理士が「納得がいかないなら、更正の請求をしましょうか」と言ってきたそうだ。社長は、「・・・」と意味不明。そこで、その違いについて税理士に聞いたという。一般納税者で「修正申告」と「更正」の違いを理解している人も少ないと思う。

簡単に言ってしまえば「修正申告」は、自ら申告内容の間違いを認め、本来払うべき税額計算をやり直して、申告する手続きだ。一方で「更正」とは、課税当局の処分に納得できず、修正申告しない場合に、課税当局に納めるべき税額を決めてもらう手続きを言う。更正の請求が行わると課税当局は、更正処分といって、決めた税額に更正内容について理由を記載して納税者に示すことになる。

要は自ら過ちを認めるのが「修正申告」であり、認めない代わりの課税当局に税額計算をやり直して決めてもらうのが「更正」というわけだ。これだけだと、結局、課税当局の言いなりで、どちらも大きな違いが感じられないだろう。結局、「更正は単に納税者側の意地を通しただけ」というイメージだ。しかし実は「修正申告」と「更正」の大きな違いがある。それは「更正」なら、課税当局の決定に不満があるときは、国税不服審判所や裁判で争うことができるが、「修正申告」してしまうと、国税不服審判所に不服申立てをすることができないのだ。理由は、自ら申告内容の過ちを認めたから。「更正」は、自らは過ちを認めたわけではない。故に、課税当局の決定に納得が出来なければ、不服申立てなどで争えるというわけだ。

ちなみに、修正申告をすると不服申立ては出来ないが更正の請求はできる。「修正申告」と「更正」は一見似ているようで、その意味は大きく違う。ならば、修正申告しないですべて「更正」し、理由付記させた方が良いと考える人もいると思うが、税務調査は調査官と納税者の一定の信頼関係で行われており、明らかにミスしているものを「更正」となれば、課税当局も〝しこり“が残るものと推察される。そういえば、若かりし専門紙の記者時代、「更正」の変換を間違えて、「更生」にして原稿を出してしまったことがある。上司に「おまえは生き方を正すのか」と厳しい指摘をされた。「更正の請求」を見ると、今も懐かしい思い出となっている。