所属税理士の直接受託と補助業務

所属税理士の場合、税理士事務所および税理士法人の補助者として仕事をする場合と、税理士資格者として、個人的に直接仕事を受任する2パターンある。

直接受任する業務を自宅でする場合は、税理士登録している事務所は、勤務している税理士事務所や税理士法人になるため、他で事務所を設けることはできない。そのため、自宅で税理士業務を行う場合、税理士事務所と同等の設備を有していると、同法40条第4項に抵触する可能性があるとしている。

判断が難しいのが、どこまでの設備を整えていると「同等」と考えられるかだ。一般的に、個人事務所なら執務を行うためのデスクに電話・FAX、プリンター、会計ソフトなどが使いえるパソコン、税法関係の書籍などがあるぐらいだ。電話・FAX・プリンターなら複合機を購入していれば一般家庭でもあるほか、パソコンも今や一家に1台以上はある。会計事務所に勤めている資格者なら、勉強のため税務・会計などの書籍ぐらいは自宅に何冊もあるだろう。所属税理士に対する「税理士事務所と判断されない自宅」の見解は、あまりにもざっくりし過ぎている。都内の所属税理士は「直接受託する業務においても、決算申告もあれば相続案件もあるため、税理士事務所と同等の設備がなければ自宅で仕事ができない。勤務する事務所が閉っているのに、そこに行くことができなければ、どうしろというのか」と疑問を投げかける。

ただ、こちらも税理士事務所と判断されない自宅なら、臨時的に直接受任業務を自宅に持ち帰って行ったり、来客に対して一時的に税務相談に応じたりしても2カ所事務所には当たらないとしている。

一方で、所属税理士が補助者として業務を行う場合は、無資格者のスタッフ同様に、守秘義務の観点から管理・監督ができていれば自宅で業務を行うことは可能としている。ただ、所属税理士の場合は、直接受任する業務と補助業務があるため、守秘義務の観点から明確に分け、管理していくとしている。

法改正でいち早く時代に合った働き方を

これまで、税理士業界における「在宅形態」といえば、開業登録する税理士事務所が存在し、所長税理士自ら在宅で業務に対応したり、スタッフが在宅で仕事をしたりすることが想定され、現税理士法では、どちらも制限が設けられている。今回のFAQは、あくまで新型コロナウイルスの感染拡大防止に対する緊急的な措置としての、“在宅におけるテレワーク”の見解だが、全国の税理士が疑問に思っていたグレー部分に一定の見解が示されたことは大きい。最近は、国が奨める働き方改革に伴う「テレワークの推進」をはじめ、「事務所の人材不足」「事務所IT化」などを背景に、時代の変化にあわせた対応を求める声が日増しに高まっている。税理士業界の「テレワーク」の在り方については、改めて早急な法改正の必要性が指摘されそうだ。

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