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中小企業の設備投資を支援する「ものづくり補助金」(コロナ対応の特別枠)の申請方法

中小企業の設備投資や新サービス開発への投資に支援される「ものづくり補助金」(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)。補助上限額が1,000万円であり、この補助金をキッカケにして新しい事業を行いたい、思い切って設備投資をしたいという事業者も多くあります。新型コロナウイルスの影響を乗り越えるための投資に対して、補助率の引き上げなどがなされた特別枠が設けられています。この補助金のポイントや申請方法などを説明します。

まず、ものづくり補助金(特別枠)の概要を見ていきましょう。

■補助対象者

・中小企業が対象とされており、一定の要件を満たすNPO法人も対象となります。

■申請のための要件

特別枠については、補助対象経費の6分の1以上が、次のA類型からC類型のいずれかの要件に合致する投資とする必要があります

A類型:サプライチェーンの毀損への対応
顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発を行うこと
(例:部品が調達困難になったため部品を内製化、出荷先の営業停止に伴って新規顧客を開拓等)

B類型:非対面型ビジネスモデルへの転換
非対面・遠隔でサービスを提供するビジネスモデルへ転換するための設備・システム投資を行うこと
(例:自動精算機・キャッシュレス端末の導入、店舗販売からEC販売へのシフト、VR・オンラインによるサービス提供等)

C類型:テレワーク環境の整備
従業員がテレワークを実践できるような環境を整備すること
(例:WEB会議システム等を含むシンクライアントシステムの導入等)

・以下を満たす3~5年の事業計画を策定して、従業員に表明することが必要です。

-給与支給総額を年平均で1.5%以上増加
-事業場内の最低賃金を地域別最低賃金+30円以上
-付加価値額を年平均で3%以上増加
(付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものを言います)

事業計画期間内(3~5年)で上記を達成する計画を作る必要がありますが、特別枠の場合、達成期限が1年間猶予(通常よりもこれらの目標達成が1年先でよい)されます。

■補助金額、補助率

補助金額上限:1,000万円
(感染防止対策費を計上する場合、50万円の上乗せがあります)
補助率:A類型では2/3、B・C類型では3/4

■補助対象事業

「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資などに対して補助されます。公募要領には次のように分類されています。

新商品の開発
例)避難所向け水循環型シャワーを開発
新サービスの開発
例)仮想通貨の取引システムを構築
新たな生産方式の導入
例)作業進捗を「見える化」する生産管理システムを導入
新たな提供方式の導入
例)従業員のスキルに応じて顧客をマッチングするシステムを導入

特別枠では、上述のように経費の6分の1以上をサプライチェーンの毀損への対応、非対面型ビジネスモデルへの転換、テレワーク環境の整備とする必要があります。

■補助対象経費

上記の事業の実施に必要となる経費で、以下が補助対象となります。

①機械装置・システム構築費:設備や器具の購入、システム開発などの経費。
②技術導入費:知的財産権の導入にかかる経費。
③専門家経費:外部の専門家(技術指導や助言など)に支払う経費。
④運搬費:運搬、宅配、郵送にかかる経費。
⑤クラウドサービス利用費:クラウドサービスの利用にかかる経費。
⑥原材料費:試作品の開発に必要な原材料などの購入にかかる経費。
⑦外注費:新製品・サービスの開発に必要な加工や設計・デザイン・検査などを外注する場合の経費。
⑧知的財産権等関連経費:特許権の取得にかかる弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など。
⑨広告宣伝・販売促進費:新製品・サービスの広告(パンフレット、動画、写真等)の作成や媒体掲載、展示会出展、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用などの経費。
⑩感染防止対策費:事業を実施するために必要な感染拡大予防のための取組に要する経費。この経費を計上する場合、50万円を上限として全額が補助されます。対象となるのは消毒費用やマスク費用、換気費用などです。

これらの経費は、原則として、交付決定を受けた日付以降に発注したものが対象となります。
ただし、今回の特別枠については、事務局から事前着手の承認を受けた場合は、承認日以降に発生した経費についても補助対象とすることが可能です。
次に申請の流れや必要な書類について説明します。

■申請の流れ

補助金の申請から支給されるまでの流れは次の図のようになります。

 

(ものづくり補助金の公募要領より)

※申請期限から採択通知まではおよそ1か月強の見込み
※補助事業実施期間は交付決定から10か月以内

ものづくり補助金の申請は、電子申請(オンラインでの申請)となります。
▶こちらから、電子申請システムにログインできます。

申請にあたっては、GビズIDプライムアカウントが必要となります。これは、補助金の申請などの行政手続きをオンラインで行うためのアカウントです。アカウントの作成は▶こちらから行えます。アカウントの発行までに3週間ほどかかりますので、アカウントを持っていない場合は先に発行の手続きを行うことをお勧めします。

申請にあたっては、システム上で入力する項目と添付書類が必要となります。

■システム上で入力する項目

  • ・企業情報
  • ・株主一覧、役員一覧
  • ・経営状況(売上、利益)
  • ・補助事業計画名
  • ・補助事業計画の概要(100字程度)
  • ・会社全体の事業計画
  •  3~5年の売上、人件費、営業利益、付加価値額などの数値計画。
  •  ここで、給与支給総額を年平均1.5%以上増加、付加価値額を年平均で3%以上増加の計画にする必要があります。
  • ・これまでに補助金の交付を受けた実績(なければ入力不要)
  • ・経費明細表
  •  各経費の金額や内容の内訳を記載します。
  • ・加点項目の有無のチェック
  • ・労働者名簿(小規模事業者のみ)

■添付書類

  • ・事業計画書その1:補助事業の具体的取組内容
  • ・事業計画書その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
  • ・事業計画書その3:会社全体の事業計画の算出根拠
  •  その1~その3で計10ページ以内での作成を求められています。
  • ・決算書(過去2期分)
  • ・賃金引上げ計画を従業員に表明したことを示す書類
  •  給与支給総額を年平均1.5%以上増加、事業場内の最低賃金を地域別最低賃金+30円以上とすることを従業員に表明した書類です。ものづくり補助金のサイトに様式が提供されています。
  • ・加点項目がある場合の該当書類
  • -成長性加点:経営革新計画承認書
  • -政策加点:開業届または履歴事項全部証明書(創業・第二創業の場合)
  • -災害等加点:事業継続力強化計画認定書
  • -賃上げ加点:特定適用事業所該当通知書

■事業計画書(その1からその3)について

これらの書類作成が、ものづくり補助金申請にあたってメインの作業となります。
特に定められた様式はありませんが、公募要領の説明と審査項目から次のような内容を盛り込むとよいでしょう。

・事業計画書その1:補助事業の具体的取組内容
-補助事業に関する、これまでの自社での取組み経緯・内容
-機械装置の取得やシステム開発などをしなければならない必要性や課題
-課題を解決するために必要な開発内容、材料や機械装置など
-取得する機械装置や開発するシステムの詳細情報(型番など)
-補助事業の具体的な目標とそれをどのように達成するか
-実施体制、スケジュール
-補助事業を行うことによって、どのように他者と差別化し競争力強化が実現するか
「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」または「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性

ものづくり補助金では「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に対して補助されますが、これらの指針やガイドラインに合致しているかどうかが基準の1つとなります。主に製造業でのものづくりでは「特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」を参照し、それ以外のサービス開発や提供方法の改善では「生産性向上のためのガイドライン」を参照します。

この指針やガイドラインについて、ここでは詳しく触れられませんが、それぞれで示されている技術分野や手法を紹介します。

「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」では、製造業の競争力強化に向けた方向性として12の分野が示されています。

・デザイン開発 ・情報処理 ・精密加工 ・製造環境 ・接合、実装 ・立体造形
・表面処理 ・機械制御 ・複合、新機能材料 ・材料製造プロセス ・バイオ
・測定計測

「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」では、生産性向上のための10の手法が示されています。

(「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」より)

・事業計画書その2:将来の展望
-想定している具体的なユーザー、マーケット、市場規模
-新製品やサービスの価格的・性能的な優位性、収益性
-事業化について、目標となる時期や売上規模

・事業計画書その3:会社全体の事業計画(3~5年)の算出根拠
-売上高の算出根拠:既存事業の売上と新規事業(補助事業)の売上、新規事業(補助事業)について、想定される販売先、単価、販売数、販売方法など
-人件費、給与支給総額の算出根拠:賃上げ計画や新規採用予定人数など

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