一方、酒類の所管官庁である国税庁でも、酒類の公正な取引の確保に向けて手をこまねいていたわけではない。
酒類業者の自主的な取組が推進されるよう平成18年に、酒類の価格について「仕入価格+販売管理費+利潤」となる設定が合理的であることや、酒類を顧客誘引のための「おとり商品」とすることは不適正であり改善すべきことなどを示した「酒類に関する公正な取引のための指針」を策定して周知・啓発を行うほか、酒類の公正な取引環境の整備のための酒類の取引状況と実態調査を実施して是正に努めている。しかし、最新の平成26事務年度分の調査結果を見ると、調査した1,458場中1,401場において総販売原価(仕入価格(又は製造原価)に販売費・一般管理費等を加えたもの)を下回る価格で販売するなどの「合理的な価格の設定をしていないと認められたもの」となっており、いくら疑わしい所に的を絞って調査を行ったにしてもかなりの高確率だ。
このような数字となる要因は、指針に則していない取引等を把握しても罰則規定が設けられておらず改善に向けての指導に止まるためで、その結果、何度も指導を受ける販売場も少なくないのが実情だ。
公正な取引基準に従わなければ免許取り消し
さて、今回の法改正では、財務大臣が酒類に関する公正な取引について、酒類製造業者又は酒類販売業者の適切な経営努力による事業活動を阻害して消費者の利益を損なうことのないよう留意しつつ、酒類製造業者等が遵守すべき「公正な取引を定める基準」を新たに設ける。基準内容は今後の告示を待つことになるが、明らかに仕入れ値よりも販売価格が安いなどといったケースが罰則の対象となるので、大量仕入れでコストを下げ販売価格を抑えるといった企業努力には適用されない。
この基準を遵守しない酒類製造業者等に対しては改善を求める指導が行われる。具体的には、1)指示、2)公表、3)命令の順番で改善の指示が図られ、最終的に命令にも従わない場合は“免許取消し”が下されることもある。また、公正な取引の基準を実行するため、財務大臣の質問検査権の対象に、酒類業組合や酒類製造業者、酒類販売業者等の関係事業者が追加された。
一方、酒類小売業者には、未成年者の飲酒防止等の観点から、従前より小売販売場ごとに酒類の適正な販売管理の確保を図るため、酒類の販売業務に関する法令を遵守した業務が行われるよう酒類小売業者に助言したり、酒類の販売業務に従事する従業員等に対して指導を行う「酒類販売管理者」の設置が義務付けられているが、この酒類販売管理者への研修が強化される。具体的には、これまでの選任後3カ月以内の研修の受講に加えて、その後概ね3年に1度の研修を受けるよう国税庁で勧奨していたものを、財務省令で定める期間ごとに研修を受けさせなければならないと法制化し、定期的な研修を義務付ける。
なお、研修を受講させない場合は、酒類小売業者に対し勧告・命令が行われ、それでも従わなければ50万円以下の罰金が課される。
施行は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内の政令で定める日とされているが、年内の施行が予想されている。街のお酒屋さんが減っていくのは寂しいが、お酒が手頃な値段で飲めないのも辛い。お酒好きには厳しい時代がやってくるかもしれない。




