各省庁の平成30年度予算概算要求・要望額及び定員・機構の要求が提出された。これから年末にかけて、財務省の主計官と各省庁の担当職員との予算をめぐる戦いが始まる。このうち、国税の執行機関である国税庁の要求・要望では、適正・公平な課税に向けた施策等のための予算や新ポストの要望などを行っている。詳細を見ると……。

省庁の予算概算要求は、7月頃に閣議了解される「予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」に沿って行われる。国税庁もこれに基づき、既存予算を厳しく見直すとともに、取り巻く環境の変化に適切に対応し、適正・公平な賦課及び徴収を実現するために必要な経費を確保するための要求を行っている。

KSKシステム・ICT化関係経費等「情報化経費」に447億円

国税庁が明らかにした平成30年度予算概算要求・要望額は、前年と比べ59億円少ない6945億円を要求している。このうち、5万人を超える職員の給与等に充てる人件費が8割近くの5476億円を占めており、これを除いた1469億円が業務等に係る一般経費となる。

この一般経費をみると、最も要求額として大きいのは、主に税務諸用紙及び郵送等の通信費などに充てられる「庁局署一般経費」の591億円で、前年よりも1.1%増えた。これは近年、国税当局がe-Tax(国税電子申告・納税システム)の推進に力を入れていることから、税務諸用紙費用は減少しているものの、郵送等における郵便料金の値上げや税務調査(国内)旅費の増加額がこの減少分を上回っているためだ。

次に多いのが、KSK(国税総合管理)システムやICT化関係経費を中心とする「情報化経費」の447億円で、こちらも8.3%前年よりも増えている。内訳では、KSKシステムの使用機器がレンタルのため毎年賃借料が発生するとともに、システム開発(改良)を行っていることからこれらの費用に364億円。滞納圧縮の急先鋒となっている「集中電話催告センター」の充実や537ある庁局署を結ぶLANの運用経費として74億円を計上しているほか、平成31年度の完成を目指して進めている内部事務の効率化を図るための徴収システムと集中電話催告システムを統合する新しいシステムの開発費用なども含まれている。

その他、1)e-Tax経費や電話相談センターの運営経費、国税庁ホームページ関連経費などの「納税者利便性向上経費」が113億(対前年比13%増)、2)庁舎の耐震改修経費などの「職場環境整備・安全対策経費」が80億円(同5.3%増)、3)マイナポータル関連費用などの「共通番号制度関係経費」が59億円(同6.2%増)、4)海外法人の情報収集、海外取引や海外資産の把握、相互協議のための海外出張旅費などの「国際化対策経費」が9億円(同2%増)含まれている。

さらに予算概算要求には、要望基礎額の一定の範囲内で予算要求が行える「新しい日本のための優先課題推進枠」が設けられており、国税庁ではここでもKSKシステムやe-Taxのシステム改修等のため約36億円を要求している。

1千人超の増員を求めているが、純増数は53人

国税庁の職員数は、昭和40年台後半から50年代は5万2千人台だったが、平成に入って消費税導入に伴い増員された。そして、平成9年度をピークに同29年度は5万5667人となっている。同30年度の定員要求では、厳しい行財政の中で近年問題視されている海外を含む租税回避や調査・徴収事務の複雑化、税制改正等への対応として1105人の増員を要求した。ただし、各省庁に対しては国から定員合理化目標が設定されており、国税庁の30年度定員合理化目標数は1052人とされていることから、これを差し引くと純増は53人にとどまる。

ICT化対応で東京国税局に「情報システム部」の新設

機構の要求をみると、メーンはICT化への対応のための東京国税局への「情報システム部」(仮称)の新設だ。この要望は昨年に引き続いてのもので、マイナンバーの利活用や申告手続などのICT化を進めていく中で、東京国税局の総務部事務管理課及び情報処理部門の事務量が許容範囲の限界まで来ているための措置で、総務部からこれらの課部門をシステム開発の「部」として切り離し設置する。主な業務は、KSKシステム等の運用管理で、要望が通れば東京国税局としては、「総務部」「課税第一部」「課税第二部」「徴収部」「調査部」「査察部」に続く7部目となる。また、新設要望としては、調査・徴収事務の複雑化等への対応として、東京国税局に「特別機動国税徴収官」(仮称)を要求している。

これは、年々増える長期滞納事案や接触困難事案の処理を進めていくためのもので、国税局庁舎から遠い都下の多摩地区や山梨、千葉、神奈川の各県に計4名設置する。

この他では、国際的租税回避事案の情報収集や分析、租税回避スキームの解明など国際化事案への対応のために「国際税務専門官」を、国税不服申立制度の改正等に伴う審理体制を充実に向けて国税局・税務署の審理専門職員をそれぞれの増員、再任用短時間勤務職員用のポストとして、租税教育の拡充を図る観点から「国税広報広聴専門官」(仮称)の新設や「税理士専門官」等の増員も求めている。

税務署長等の元指定官職用再任用ポストも要求

平成25年度に60歳定年退職となる職員から、公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に65歳へと引き上げられたことに伴い、同年度から定年後、年金を受給するまでの間の経済的穴埋めとして、国家公務員の再任用が行われている。国税職員も一般職員はもとより、いわゆる「あっせん」がなくなったことから指定官職の再任用が増加の一途にあり、国税局管内の大規模税務署の署長が再任用を受けるケースも目につくようになっている。そこで、国税庁ではこれらの職員に対する「再任用短時間勤務職員用ポスト」の要望を近年増やしており、今回も上記に加えて、国税庁に派遣国税庁監察官補、国税局に税理士専門官や人事専門官、税務分析専門官などのポストの増設を求めている。

国税庁を含めた各省庁の要望がどの程度認められるかは年末には明らかとなる。

国税庁 平成 30 年度の主な機構要求

*国税庁公表資料より