国際税務を軸とする永峰・三島コンサルティングのパートナー西進也氏は、大手グローバルメーカーで持ち前の英語力を活かして経営企画に携わったのち、会計業界にキャリアチェンジした実力派会計人。今回は、これまでのキャリアや次世代の会計人たちに引き継いでいきたい今後の業界のあり方について伺いました。(取材・撮影:レックスアドバイザーズ 村松)

会計業界に至るまでのキャリア

会計業界を志したきっかけと、会計業界にいらっしゃるまでのキャリアについて教えてください。

西:大学は商学部でした。これだけだと今の仕事に通じているように見えますが、実は、会計との出会いは屈辱のスタートだったのです。大学1年生のときに会計学概論という授業がありました。受からないと3年生になれない授業だったのです。今となっては面白い話ですが、私は学年で唯一1年生で会計学概論を取得できず、2年生になったのに1年生に混じって授業を受けなくてはならなくなりました。その時、会計の領域は二度とやらないと決意し、経営やマーケティングを勉強しました。

大学卒業後はマーケティングに携わりたいと、新卒で大手グローバルメーカーに就職したところ、最初に配属されたのは営業でした。営業にいたのは1年だけで、2年目からは「帰国子女で英語ができるから」ということで、経営企画室で英語の書類作成を行いました。経営企画室での2年間の中でインターネットが普及し、今度は「若いから」という理由でEコマース推進部でネット関係の商売を企画する部門に移りました。

その後、仕事に悩んでいたタイミングで任された仕事が「会計システムの構築」だったのです。学生時代の苦い思い出もあったのですが、いざ始めてみると、会計は結果が1つです。当時、自分探しの旅に出ている気分だった私は、この「結果が1つ」というところに惹かれました。

そこからキャリアチェンジされて、会計業界に入られました。

西:はい、そうですね。キャリアチェンジはもちろんなのですが、大企業の経営に携わる中で大勢の社員がいて、情報の伝達に時間がかかるような組織から出て、それぞれの人間性まで知ることができるような組織に行きたいという思いもありました。

キャリアチェンジの際には未経験ですし年齢も高かったのでなかなか仕事が見つからず、小さな街の会計事務所で時給850円のアルバイトを2年間。その後、社員として3年間働きました。多くの社長さんに直接提案ができるという醍醐味がありましたね。

その中で痛感したのは、この業界のほとんどの人が税務や会計のルールに使われてしまっているということ。会計事務所というのは、意思決定を売る商売なのです。税務署の使い走りではなくて、お客様の役に立つために自分が何を提供できるのかを考えるきっかけになりました。

そしてその後、やはり得意の英語を使ってチャレンジしてみたいと思い今の職場にたどり着きました。

永峰三島コンサルティングでのキャリア

入所された当初はどのような業務をされていましたか?

西:入った当時はジュニアスタッフでした。実際に仕事をしてみると、外資系のクライアントがほとんどなので、国内の会計事務所とは、使う知識が全然違っていましたね。当時は英語のできるメンバーがあまり組織にいなかったので、英語を話す案件は全部回ってきました。任される仕事に取り組むうちにどんどん楽しくなってきて、毎日終電になっても苦にならないほどでした。

英語を使って直接海外の方とやり取りをしていましたが、スピーディに返信するとメールでThank youと言ってくれます。この小さなThank youの積み重ねが毎日のモチベーションにも繋がったのだと思います。

ここからかなりのスピードでキャリアアップされて、取締役に就任されています。何か意識されていたことなどはありますか?

西:当時仕事で意識していたのは「自分がこの会社の社長なら何をするか」ということです。300社ほど設立から関わりましたが、単に会計処理をする、税務の申告をする、というのではなくて、もし自分がこの会社の社長になったら、会計・税務の知識を使ってどう商売するかと絶えず考えていましたね。だからクライアントから評価されるレベルに達するまでが早かったと思います。

あとは、(現会長の)永峰と一緒に、年に2、3回、海外の会計事務所の方とお話しする機会があります。我々の事務所はだいたい130か国ぐらいをカバーしているアライアンスに入っているので、グローバルミーティングがあるのです。その中で、海外の展開スピードを実感できますし、世の中の変化も掴めます。RPAも日本国内で取り入れられる前に「海外のどこの国で、どの分野で使っている」という話を聞いていました。だから当社も早い段階で「このタイミング、このエリアで手を打とう」と計画できたのです。

経営についてと組織の今後のビジョン

現在社長としてご活躍ですがその中で意識されていることについて教えてください。

西:意識しているのは、世の中の流れがどう変わり、自分達の能力はどれぐらいで、組織のどこにギャップがあり、どこを強化しなくてはならないかということです。単に売上が高い低いではなく、クライアントとの仕事によって双方が得られるものについても考えています。例えば、ネイティブの英語を話す国の子会社との仕事を通してこちらのさらなる英語力向上を図ることもできます。

今後の組織作りについて、大切にされていることはありますか?

西:やはりこの業界はデジタルフレンドリーなので、それを上手く使いこなすことでしょうか。現在、RPAの導入も積極的に行っています。今までは、会計ソフトや税務申告ソフトなど別々に情報を入力しなければなりませんでした。しかしRPAの導入によってすぐに「消費税の観点から、法人税の観点から、会計の観点からはそれぞれこうなっています」とズバリ答えられる。お客様とのWebミーティングで「宿題にさせてください」というのが無くなり、信頼も得られますよね。情報が溢れている現在、質問されて一週間後に返していたのでは、お客様本人でも解決できてしまいます。会計の知識を使ってスピーディに回答ができることは、付加価値になりますから。

経営の面白さや、大変さについてはいかがでしょうか。

西:経営の立場に立つと、自分の代わりに組織を引っ張ってくれるリーダー格のメンバーを育成することが重要です。大変なこともありますが、メンバーたちが、先に回って仕事をしてくれたり、新入社員の子たちがリーダー格の子たちを慕って、リーダー格の子が仕切ってくれたりする。そういった姿を見ると、やりがいがあったと感じます。

経営の面白さという点では、新卒で入社をしたような大企業の経営と現在のような組織の経営では、スピード感も一人ひとりの役割も全く異なります。現在の規模だと組織全体が見えているので軌道修正がとてもしやすい。結果もすぐに出ますし、働いていて非常に納得感があります。

育成の際、皆さんに特に伝えていることなどはありますか?

西:「Thank youコレクターになるように」とよく言います。例えばメールに返信をするのも、相手が会社のどのポジションにいて、その人が評価される仕事・実現したい仕事を助けられるような文章を発信できているのか。相手の立場に立って、求められていることに応えることができれば必ずThank youをもらえます。Thank youをもらえない場合は、何かが足りないのです。返信が遅いとか、内容が整理されていないとか。Thank youを早い段階でもらえるようになったメンバーは、うちの組織にもはまっているように感じます。

KaikeiZineの読者へメッセージ

西:面接をしていると「専門能力を身に付けたい」という方が多いです。しかし私は、「専門能力を使って何をしたいか」それを考えて職場を選んでもらいたいと思います。自分はこれをやりたいという形で追及すると、自分も夢中になれて尚且つ専門能力も磨けると思います。

私の場合、自分がしたいことは、同世代の仲間から話を聞いて情報収集して見つけました。実際に仕事をしている人の生の経験談を聞くというのが、一番近道だと思います。人の経験を自分の耳で聞いて、自分の中で咀嚼してみるのです。

自分が何をしたいのかを念頭において、目的の仕事や職場にたどり着けることが一番いいのではないでしょうか。

一方でこれがやりたいというのが見つかっていない場合でも、何らかの事業の経験があり、経理の勉強をしてもいいという人であるなら、会計業界ほど、将来の投資になる仕事はないと思います。

この業界できちんと知識をつけると、選択肢がどんどん広がっていきます。会計業界に関わらず、いろいろな業界に行けると思います。そういった意味で、読者で読んでいて行き詰っている、会計の知識を2、3年投資するのは惜しまないというなら、いろいろな業界の人と会えるこの業界に飛び込むのは、自分にとって非常にいい投資になると思います。

【編集後記】
会計業界での経験は将来の可能性を広げるということですね。西様ありがとうございました!

永峰・三島コンサルティング

●設立

1989年9月1日

●所在地

本店
東京都千代田区永田町2-11-1 山王パークタワー4階

●理念

世界中のお客様に英語で最高品質のサービスを提供する

●企業URL

https://nagamine-mishima.jp/

 

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