4.審判所の判断
(1)法令解釈
消費税の簡易課税制度適用上第五種事業とは、運輸通信業、金融業及び保険業並びにサービス業(飲食店業に該当するものを除く。)で第一種事業(卸売業)、第二種事業(小売業)及び第三種事業(農林漁業、建設業、製造業など)に該当しないものをいうと規定されており(消令57⑤四)、第四種事業とは、第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業及び第六種事業のいずれにも該当しないものをいう旨と規定されている(同項六)。また、消費税法基本通達13-2-4は、第三種事業、第五種事業及び第六種事業に該当することとされているそれぞれの事業の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定する旨定めている。
ここにいう日本標準産業分類は、統計法に基づいて総務大臣が定める、統計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として、事業所において社会的な分業として行われる財及びサービスの生産又は提供に係る全ての経済活動を分類するものであり、統計の正確性と客観性を保持し、統計の相互比較性と利用の向上を図ることを目的として設定されたものであるから、その分類は社会通念に基づく客観的なものということができる。そうすると、第三種事業、第五種事業及び第六種事業の範囲を、当該産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定することは、簡易課税制度の公平な適用という観点からも合理性があると認められ、この取扱いは当審判所においても相当と認められる。
(2)認定事実
本件事業に必要な建物、設備などはA社が準備し、請求人に貸与していた。売上金はA社の管理の下、全額A社に帰属しており、請求人は、営業に必要な原材料などをA社の指定業者に発注しなければならず、その購入代金もA社が負担しており、飲食店である店舗の経営主体はA社であると認められ、本件事業は飲食店業に該当しない。
請求人は、A社から委託を受け、店舗の運営責任者として契約書等に基づき、店舗の業務を行っている。店舗の営業時間はA社が決定し、店舗で提供する商品のメニューや価格についても、請求人はA社の指示に従わなければならない。加えて、店舗で働く従業員は、基本的には請求人が雇用し、その費用は請求人が負担するが、配置する従業員の人数や入替えなどについて、請求人はA社の指示に従わなければならない。さらに、営業委託料は、契約書等に基づき、A社が算出したところによりA社から請求人に支払われており、これらのことからすれば、本件事業は、店舗で飲食店業を経営するA社から委託を受けた請求人が、A社の指示の下、A社に対し店舗の各種業務を行う役務を提供するサービス業であると認められる。
(3)検討
上記(2)の認定事実を日本標準産業分類に当てはめると、本件事業は、「細分類9299-他に分類されないその他の事業サービス業」に該当し、「大分類R-サービス業(他に分類されないもの)」に該当する。そうすると、本件事業は、消費税法基本通達13-2-4の定めにより、消費税法施行令第57条第5項第4号に規定する、飲食店業に該当するものを除くサービス業に該当することから、第五種事業に該当すると認められる。
(4)請求人の主張の排斥
請求人は、店舗の売上げが少ない場合には本件事業は赤字になることもあり得るところ、オリジナルメニューの考案などにより店舗の売上げの確保を図っており、契約等により、利益計画書の作成、店舗の経営者としての相応の行為等を求められていることから、本件事業は、A社から委託を受けた請求人が店舗を経営しているのであって、国税庁が質疑事例で例示している学校給食の受託等と何ら変わらず、第四種事業に該当する旨主張する。しかしながら、請求人は、A社の承認を経なければオリジナルメニューを提供することができないなど、契約書等の各条項に従わなければならず、請求人が店舗を経営していると認めることはできない。