5.解説

平成元年の消費税導入時における簡易課税制度では、卸売業で90%、小売業その他の事業で80%という2区分であったが、いわゆる益税問題への批判から、平成3年の改正で、第一種(卸売業)90%、第二種(小売業)80%、第三種(製造業)70%及び第四種(その他)60%に細分された(この頃から事業区分に関する不服申し立て事例が増加してきたという指摘[2]がある)。その後、平成8年には、それまで第四種に含まれていた飲食業を除くサービス業、運輸通信業及び不動産業について第五種50%の区分が設けられ、さらに近年では、平成26年改正で、不動産業について第六種40%の区分が新設されると共に、区分間の見直し[3]が行われた[4]。事業区分の判断基準については、第一種及び第二種の判定において、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の者(第一種に区分されるためには他の事業者)に販売する場合という判断基準が通達(消基通13-2-2)で示されているが、それ以外の事業区分については、日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基準として判定することとされている(消基通13-2-4)。しかしながら、日本標準産業分類による区分が簡易課税の事業区分に必ずしもそぐわない場合もあるため、他の通達の規定(消基通13-2-5~10)や本件のような国税庁の質義応答事例により修正を図っているのが実情であり、付随的な業務も含め判断に迷う事例が多く、現在に至るまで簡易課税の事業区分に係る争いが絶えない。

本件では、請求人が主張している学校給食の場合でも、事業の委託者との間で一定の予算制約等が想定されるので、給食メニュー等を全くフリーハンドで考案しているとも思われず、したがって、請求人の場合との決定的な差異を見出すのは困難である。本裁決では、学校給食の場合何故第四種に区分されるかの検討が不十分であるといわざるを得ない。


[2] 橋本守次「歯科技工士の消費税簡易課税の適用上の事業区分の判定を巡る問題(下)」税務事例(Vol.39 No.2)2007年2月4頁参照。

[3] 平成26年の改正では、従前第四種とされていた金融業及び保険業について第五種の区分への変更、平成30年には、農業・林業・漁業について、飲食料品の譲渡を行う部分について第二種への変更が行われた。

[4] かかる改正は一貫して実際の仕入率との乖離及び益税問題の解消のためといわれている。


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