[この記事のポイント]
●配当金は所得税が源泉徴収されているので原則申告不要
●株で譲渡損があった場合は配当所得を分離課税で申告することで損益通算できることも
●課税総所得金額が900万円未満の人は配当所得を総合課税で申告することで還付を受けられることも
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国内株式や投資信託の配当金は、受け取る際に所得税等が源泉徴収されているため、原則として確定申告は不要です。
ですが、場合によっては確定申告することで、源泉徴収された所得税等が戻ってくることがあります。
配当所得を確定申告した方が良いかどうかの判断基準、また確定申告の手順について解説します。
上場株式等の配当金を確定申告した方が良い人
上場株式等の配当金は所得税が源泉徴収されているので、原則として確定申告は必要ありません(ただし、上場株式でも発行済み株式総数の3%以上を保有する大口株主である場合は除く)。
配当所得の源泉徴収税率は以下の通りです。
■配当所得の源泉徴収税率
上場株式等の配当等 | 上場株式等以外の配当等 |
所得税 15.315%+地方税 5% | 20.42%(地方税なし) |
原則申告不要ですが、場合によっては確定申告した方が、税金がトクになる可能性もあります。
上場株式等の配当所得を申告した方がトクになるかどうかは、上場株式等の譲渡損があるか、他の所得がいくらかなどの条件によって異なります。
(1)上場株式等の譲渡損がある人
上場株式等を売買したことで最終的な損益がマイナスの人(譲渡損失がある人)は、確定申告し、分離課税を選ぶことで、配当所得と損益通算することができます(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)。
分離課税とは、他の所得と合算せずに単独で課税されることです。
損益通算とは、配当所得の利益と譲渡損失とを相殺して、配当所得にかかる税金を減らすことです。
■損益通算のイメージ
源泉徴収ありの特定口座に受け入れた上場株式等の配当等は、同一口座内の上場株式等の譲渡所得等とは損益通算されており、損益通算の結果損が出ていれば、確定申告しなくとも源泉徴収税額の過納分が還付されます。
その他の口座で配当金を受け入れている場合、またその他の口座の譲渡損失と損益通算したい場合は、申告が必要になります。
上場株式等の譲渡損の額によりますが、損益通算後の配当所得がゼロになる場合などは、総合課税(後述)を選ぶよりも申告分離課税を選んだ方が税金面ではオトクになります。
なお、大口株主の場合や非上場株式の配当の場合は、申告分離課税は選択できません。
(2)課税所得が900万円未満の人
所得税は累進課税といって、課税所得が多いほど高い税率が課されます。
■所得税率
課税される所得金額 | 税率 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% |
40,000,000円 以上 | 45% |
(画像:国税庁「No.2260 所得税の税率」を元に筆者作成)
所得金額が多くなるほどに税率は高くなりますが、少なくなれば源泉徴収された税率(20.315%)よりも所得税の税率の方が低くなるため、納め過ぎた税金の還付へと繋がるわけです。
総合課税とは、他の所得と合算した「課税総所得金額」に課税するものです。
また、配当所得で総合課税を選択すると配当控除が利用でき、すでに納めた税金が所得から控除されることになります。
配当控除とは、法人税を差し引かれた利益を分配する配当金にさらに所得税を課すことで二重課税になるという観点から、以下を控除するものです。
・剰余金の配当等に係る配当所得×10%(証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得は5%)
※課税所得1千万円を超える部分は5%(証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得は2.5%)
■上場株式等の配当控除の控除率(1,000万円前後)
上記を踏まえると、所得税率から配当控除10%をマイナスした税率が、源泉徴収税率を下回れば申告して総合課税された方が税金面でトクになります。
■総合課税の所得税率が23%の場合のイメージ図
■総合課税の所得税率が33%の場合
配当控除を利用した方が良いラインは、課税総所得金額が900万円未満の人となります。
ただしこの場合、住民税は申告不要を選択しましょう(所得税の確定申告の手続きの中で選択できます)。
住民税は総合課税にすると税率が一律7.2%(住民税所得割10%-所得控除2.8%)と源泉徴収税率の5%よりもかえって高くなってしまう上に、申告して総所得金額が増えることで、国民健康保険や後期高齢者医療制度などの保険料や配偶者控除などにも影響してきてしまいます。
なお、金融所得への課税強化を掲げる令和4年度税制改正により、所得税と住民税で異なる課税方式を選ぶ節税策は、2024年確定申告からは利用できなくなります。
住民税だけ申告不要を選ぶことができるのは、2023年に申告する今回(2022年分)の確定申告までです。
(3)NISA口座で買い付けた上場株式等の配当金が「株式数比例販売方式」になっていない人
NISA口座で買い付けた上場株式の配当金の受取方法は、以下から選択します。
・配当金領収証方式…ゆうちょ銀行等及び郵便局に「配当金領収証」を持ち込み受け取る方式
・登録配当金受領口座方式…指定の銀行口座で受け取る方式
・株式数比例販売方式…証券口座で配当金を受け取る方式
「株式数比例販売方式」を選択している場合、配当金は非課税ですが、「配当金領収証方式」や「登録配当金受領口座方式・個別銘柄指定方式」を選択していると、配当金等は非課税とはなりません。
20.315%の税率で源泉徴収されます。
この源泉徴収分は、確定申告を行うことで、配当控除の適用を受けたり、申告分離課税を選択して特定口座や一般口座で保有する上場株式等の譲渡損失との損益通算や繰越控除をしたりすることができます。
NISA口座は非課税というイメージがありますが、受取方式によっては普通の配当金と同様に申告した方が有利か不利か、どの申告方法にすべきかを検討する必要があります。
配当所得の計算方法
申告する際には、株式などを取得するのに借り入れたお金の利子を収入金額から差し引けます。
■配当所得の計算
配当所得の金額=収入金額(源泉徴収税額を差し引く前の金額)―株式などを取得するための借入金の利子