「海外の財産にまで差押処分はされないだろうから大丈夫」なんて思っていると大間違い。税務署の権限は何処まで及ぶのかについて、元国税徴収官が分かり易く説明します。
◇国税の所轄庁及び納税地
○所轄庁
所轄庁とは、一定の事項について管轄権・監督権を持つ行政機関のことで、国税の徴収の所轄庁は原則として、納税者の現在の納税地を所轄する税務署長となります。
○納税地
納税地は、税目により異なり、各税法に定められていますが、その主なものは次のとおりです。
| 区分 | 納税地 | |
| 申告納税による所得税 | 納税者の住所又は居所(所法15一、二) | |
| 源泉徴収による所得税 | 給与などの支払日における支払事務所等の所在地(所法17)(支払事務所等を移転した場合には、当該事務所等の移転後の所在地) | |
| 法人税 | 法人の本店又は主たる事務所の所在地(法法16) | |
| 相続税 | 納税者の住所又は居所(相法62①) ただし、当分の間は、被相続人の死亡時の住所(相法附3) |
|
| 贈与税 | 納税者の住所又は居所(相法62①) | |
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消費税
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個人 | 住所、居所又は事務所等の所在地(消法20一、二、三、21 ①②) |
| 法人 | 本店又は主たる事務所の所在地(消法22一) | |
(税務大学校講本「国税通則法(基礎編)」から)
※筆者注:所法=所得税法、法法=法人税法、相法=相続税法、消法=消費税法
◇納税地の異動等と所轄庁
所得税や法人税などの納税地は、原則として納税者の住所又は本店などの所在地ですが、これらは課税期間の開始後に移転する可能性を有しています。
納税地が異動した場合には、現在の納税地(新しい納税地)を所轄する税務署長が所轄庁となります(新納税地主義)。
ただし、納税者が異動前の旧納税地を所轄する税務署長に申告書を提出したときは、その提出を受けた税務署長は、当該申告書を受理して現在の納税地を所轄する税務署長に送付することで現在の納税地に提出されたものとみなします。
また、納税者にもその旨が通知されます(国税通則法第21条2項及び3項)。
◇滞納処分の執行機関
滞納処分の執行機関は、その国税の徴収の所轄庁である税務署長又は国税局長とその税務署又は国税局所属の徴収職員です(国税通則法第43条)。
◇徴収の引継ぎ
大口の滞納や事案の複雑な滞納について、国税局長が国税の徴収について必要があると認めるときは、管内の税務署長から徴収の引継ぎを受けて、徴収の所轄庁となり滞納処分を執行することができます(国税通則法第43条3項)。
また、税務署長は、国税の徴収について必要があると認めるときは、他の税務署長に徴収の引継ぎをすることができます(国税通則法第43条4項)。
これは、税務署にとっての事務効率の向上及び納税者にとっての利便性の向上に資することから設けられています。
◇滞納処分の引継ぎ
税務署長又は国税局長は、差押さえるべき財産又は差押財産がその管轄区域外にあるときは、その財産の所在地を所轄する税務署長又は国税局長に、滞納処分(財産の差押え、参加差押え、交付要求、換価、換価代金の配当等)を引き継ぐことができます(国税徴収法第182条2項)。
また、税務署長は、差押財産又は参加差押不動産を換価に付するため必要があると認めるときは、他の税務署長又は国税局長に、滞納処分を引き継ぐことができます(国税徴収法第182条3項)。
「徴収の引継ぎ」や「滞納処分の引継ぎ」がされた場合には、その旨が納税者に通知されます。
◇徴収共助
差押えの対象となる財産は、法施行地域内にあるものでなければならず(国税徴収法基本通達第47条6)、租税を徴収するための権限は国外で行使することができないという制約があります。
このため、租税条約において、国外への財産移転による国際的な徴収回避に適切に対応することを目的として、各国の税務当局が協力して互いに相手国の租税を徴収する「徴収共助」の枠組みが設けられています。
国税庁は、税務行政執行共助条約※などに基づく徴収共助の制度を積極的に活用して、国際的な租税の徴収に取り組むこととしています。
※租税に関する情報の交換、徴収、文書の送達を相互に支援することを定めた多国間条約であり、我が国を含め124の国・地域において発効しています(令和2(2020)年6月1日現在)。

≪参考≫国外財産を追いかけろ!~国際徴収への取組~国税庁YouTube(約20分)
◇滞納処分の停止と徴収共助の関係
滞納処分の停止の要件の中にも、「徴収の共助の要請による徴収をすることができる財産がないとき(国税徴収法第153条第1項第1号)」と規定されています。
具体的には、停止判定時において次に掲げる場合のいずれかに該当するときをいいます。
1.法施行地域外に滞納者の財産がないと認められるとき
2.法施行地域外に滞納者の財産があると認められる場合において、次に掲げる場合のいずれかに該当するとき
イその財産があると認められる国又は地域との間に徴収の共助に関する規定を有する租税条約等が締結されていないとき
ロその財産があると認められる国又は地域との間に徴収の共助に関する規定を有する租税条約等が締結されている場合において、次に掲げる場合のいずれかに該当するとき
・その国税が租税条約等に定める徴収の共助の要請に係る要件(税目、期間等)に該当しないとき
・その財産が相手国等の法令若しくは行政上の慣行により差押えが禁止されているとき、又はその財産の処分予定価額が相手国等の法令若しくは行政上の慣行により徴収の共助の要請に係る国税に優先する債権の合計額を超える見込みがないとき
・上記のほか、相手国等における戦乱、天災、通信又は送金の途絶、相手国等の税務当局との行政上の負担の不均衡その他の事情により、徴収の共助の要請により徴収することが困難であると認められるとき
◇まとめ
滞納処分の所轄庁は、原則として納税者の現住所地を管轄する税務署であり、特例的に、国税局や他の税務署で処分してもらう「徴収の引継ぎ」や「滞納処分の引継ぎ」があります。
更に特例的に、国外にある財産をその国で滞納処分をしてもらう「徴収共助」があります。
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