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2017年税制改正 金融庁が要望する「積立NISA」とは・・・

2017年度税制改正に向けて、NISA(少額投資非課税制度)の第三段、「積立NISA」の創設が検討されている。NISA、ジュニアNISAと着実に普及してきただけに、金融庁としては、手元資金が十分でない若年層の利用促進を目的に、少額からの積立・分散投資を可能にする「積立NISA」を創設したい考えだ。金融庁が目論む「積立NISA」に迫った。

現行NISAは、口座開設数が約1千万口座、買付金額が約7.8兆円となるなど、制度開始以降、着実に普及(平成28年3月末時点)してきた。そのため金融庁では、国民のNISAニーズを継続させていくため、新たに「積立NISA」の創設を予定している。

その積立NISAは、現行のNISAに似た制度となっているが、異なるポイントは、長期積立を前提とした非課税口座という点。金融庁の税制改正要望によれば、ポイントは4つ。

  1. 投資上限額は60万円、非課税期間20年
  2. 長期の積立、分散に適した一定の投資商品(バランス型ファンド、非毎月分配型ファンド等)
  3. 現行NISAとの選択利用
  4. 恒久措置

金融庁としては、積立NISAは現行NISAとの選択利用を考えており、年間投資の上限額を60万円、非課税期間を20年間と設定している。狙いは、長期・分散投資のメリットを十分得られるよう、現行NISAよりも年間投資上限額を小さくする一方で、非課税投資期間をより長期に設定している。

また、現行NISAの投資可能期間は、2023年までとなっているが、積立NISAは恒久化に加え、非課税期間(5年間)終了時の対応についても考えている。

非課税期間終了時の対応では、例えば、2014年に100万円投資し、2018年に140万円と含み益が出ているケースでは、口座開設者が翌年の投資枠へロールオーバー(移管)を希望した場合、年間投資上限額である120万円を超過したとしても、ロールオーバーを可能とすることを要望している。

一方で、上記と同様に、2014年に100万円投資し、2018年に70万円と含み損が出ているケースでは、原則、払出し時点の時価である70万円が課税口座に払出しとなるが、将来、時価が70万円から上がった場合は値上がり分が課税されてしまう。そこで、払出し価額は、払出し時点の時価70万円ではなく、そもそもの取得価額である100万円とすることを改正で要望としている。

投資対象商品は、現行 NISA では上場株式、公募株式投信、REIT、ETF などだが、積立 NISAでは「長期の積立・分散投資に適した一定の投資商品」としており、現行 NISA の投資対象商品から絞り込みが行われている。積立 NISAでの投資対象商品の具体例として、金融庁は「バランス型ファンド、非毎月分配型ファンド等」を掲げている。このバランス型ファンドは、国内・国外の株式・債券・REIT など複数のアセットクラスにバランスよく投資を行う投資信託だ。

複数のアセットクラスへの分散投資を行うため、単一のアセットクラスへ投資する投資信託(例えば、日本株式のみに投資する投資信託)と比べて、相対的にリスクを抑えやすい性質を持っている。この性質から、金融庁はバランス型ファンドを長期の積立・分散投資に適していると判断したものと考えられる。

積立NISAは、現行NISAとの選択利用となるので、 目的に応じてどちらを使うかがポイントになる。まず、現行NISAが予定通り終了したとしても、積立NISAは恒久制度になるため、そのまま使い続けることが出来る。

「個人型確定拠出年金(個人型DC)との違いがよくわからない」との意見もあるが、個人型DCは60歳まで払い出しできないのに対し、積立NISAは自由に売却、払い出し可能。その点が根本的に違う。

使い分けとしては、積立NISAは60歳までのライフイベント用、個人型DCは60歳以降の老後資産形成というのが良いかもしれない。

金融庁は、積立NISAにおける各年の非課税枠を60 万円、非課税で保有できる期間を20 年間としている。したがって、累計での非課税枠は 60 万円×20 年間=1200 万円である。現行 NISA の非課税枠は2016 年以後120 万円、非課税で保有できる期間が5年間であり、累計での非課税枠は120万円×5 年間=600万円である。積立 NISAにおける累計での非課税枠は現行 NISA の2倍の水準となっており、金融庁として現行NISAより積立 NISAを選択するインセンティブを設けたものと考えられる。

なお、ジュニア NISA も現行 NISA と同様に、「新規投資が可能な期間」が 2023 年までとなっているが、今回の金融庁要望にはジュニア NISA の恒久化は含まれていない。金融庁要望により現行 NISA の新規投資が可能な期間の恒久化が実現すれば、現行 NISA の利便性は大きく向上することになる。

現行 NISA は、個人型DCや財形年金・財形住宅など他の運用益非課税の制度と比べると、払出し時期や使途の制限がなく利便性が高い。ただ、現行 NISA は新規投資が可能な期間が2023 年までという制約があり、中長期のライフプランを踏まえて資産運用を計画しようとしたとき、現行 NISA 終了後の運用方法も考えなければならないという点がネックになっていた。今回の税制改正大綱で制度が実現すれば、現行 NISA を生涯のライフプランの中での資産運用の一部に位置付けられ、NISA の利用が一層進むものと考えられる。

どこまで改善され、使い勝手の良い制度になるか、資産運用商品の牽引役として期待される。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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