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高齢社会の問題に朗報 成年後見人の郵便物などの転送が可能に

成年後見人制度の法改正により、平成28年10月13日から後見人は、郵便物などを本人に代わり受け取ることができるようになった。後見人があらゆるシーンで対応していかなければならないこともあり、今回の改正は、親や親族の介護などが多少はやりやすくなったと歓迎の声が多く聞かれる。

50歳も手の届く年齢になると、親や親族の生活の世話も見る機会も増えてくる。知人の間でも、親以外に独り身となった親戚の世話をしている人は少なくない。

週末、一人暮しをするおばさんの家に、生活状況などを確認するために訪問している友人は、最近、成年後見人になることを決めた。おばさんは、重度の認知症ではないものの、突然、いろんなことを忘れるという。訪問した親戚である友人のことも、病院から来る介護の人とたまに勘違いするのも珍しいことではないという。

このおばさん、亡くなった旦那さんの相続で、ある程度の資産もあり、預金や株式なども幾つか持っている。本人も数年前から老後のためにと投資信託もはじめた。とはいうものの、最近はことに忘れてしまうことも多いので、端から見ていてその管理に不安を感じているらしい。そのため、ある程度本人の意識のハッキリしているうちに成年後見人になれば、おカネの問題にも対応できると知り、成年後見人になったのだ。

その友人が、10月13日から施行された「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成28年法律第27号)について、とても喜んでいた。

「ゆうパック」は改正法に該当する郵送物でない

今回の改正のあらましは大きく2点。
① 郵便物等に関する改正
家庭裁判所の審判により、一定期間、成年被後見人宛ての郵便物等を成年後見人に転送できるようにする(転送嘱託制度の新設)。
成年後見人が成年被後見人宛ての郵便物を開封することができることを明文化する(開封権限の明確化)。

② 成年被後見人死亡後の成年後見人の権限に関する改正
成年被後見人が死亡した場合でも、一定要件のもと、成年後見人が一定の事務を行うことを認める(死後事務の権限付与)。

2点について概要を解説すると、①の「郵便物に関する改正」は、本人(成年被後見人)の財産の調査・管理のためには、本人宛に送付された郵便物等を成年後見人が包括的に受け取り、開封して点検する必要があるものの、これまではそれが法律上できなかった。そこで、今回の改正法において、成年後見人による郵便物等の管理権限について、

(1)家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、成年被後見人に宛てた郵便物等を成年後見人に配達(転送)すべき旨を嘱託することができる。ただし、その嘱託の期間は、6カ月を超えることができない。

(2)成年被後見人に宛てた郵便物を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。ただし、成年後見人の事務に関しないものについては、速やかに成年被後見人に交付しなければならない。
―としている。

郵便転送では、「ゆうパック」などは「郵便物」に該当しないため、今回の対象には含まれないが、例えば、株式の配当通知、外貨預金の入出金明細、クレジットカードの利用明細は、成年被後見人の財産に関する情報なので、成年後見人はこれを受け取ることが出来るとされる。

本人死亡後の後見人の権限明確化

このほか、②の「成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限の明文化」については、本人死亡後の成年後見人の死後事務について明確化している。というのも、本人が亡くなると成年後見が終了するため、成年後見人は、家庭裁判所に本人死亡の事実を報告し、これまで担当してきた財産管理を清算した上で、財産を相続人に引き継ぐ。しかし、親族が疎遠である場合など、本人の死亡後にも、成年後見人が未払の入院費や施設費の支払を求められたり、火葬や埋葬を依頼されることが多々ある。そこで、本人死亡により成年後見が終了した後も、成年後見人が死後に必要な事後処理を行うことができるようなった(本人の意思に反することが明らかなときは除く)。

事後処理事務の内容については、(イ)個々の相続財産の保存に必要な行為、(ロ)弁済期が到来した債務の弁済、(ハ)火葬または埋葬に関する契約の締結その他相続財産全体の保存に必要な行為の3点だ。

具体例として、たとえば(イ)であれば、相続財産に属する債権の時効が間近に迫っている場合の時効の中断や、相続財産の建物に雨漏りがある場合にこれを修繕する行為など。(ロ)については、成年被後見人の医療費、入院費および公共料金等の支払など。(ハ)については、遺体の火葬に関する契約の締結や本人が居住して家の電気・ガス・水道等供給契約の解約、債務を弁済するための預貯金の払戻しなどが該当する。いずれも、これまで成年後見人が手間だった部分が効率化された。

成年後見人になっている友人は、「今回の改正は本当に助かる。おばさん宅にはほぼ毎週訪問しているが、急ぎのものには対応できないことも多い。また、本人が正常なときはいいが、突然忘れてしまうと郵便物が紛失してしまうケースもこれまであった」と言う。こうしたことで頭を悩ませていた後見人は多いと聞く。使い勝手がよくなった点では喜ばしい。ただ、今回の改正は、成年後見のみを対象。保佐、補助、任意後見や未成年後見には適用されていないので注意が必要だ。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
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