菅官房長官は10月24日の記者会見で、高層マンション(タワーマンション)に課す固定資産税について、2017年度税制改正で見直す発言をした。富裕層を中心に活用されているタワーマンションを活用した節税については、課税の公平性の観点から以前から問題視されていた。

タワーマンションを活用した節税は、高層階であろうと低層階であろうと、マンションの固定資産税は床面積が同じなら同額という現行制度を巧みに利用したもの。そのため、菅官房長官は記者会見で、タワーマンションの固定資産税評価について「高層階と低層階で販売価格が大きく異なり、(現状の課税は)不公平だとの指摘がある」と述べ、年末にまとめる2017年度税制改正大綱に盛り込み、見直すことを示唆した。適用は2018年1月からが濃厚。

マンションの固定資産税は現状、1棟全体の評価額を算定したうえで、床面積の割合に応じて各戸の税額を算出する。そのため階層に関係なく、床面積で税額は同じだ。こうした、固定資産税評価を巧みに利用して、富裕層が高層階を購入して相続税の節税対策を行うケースが話題になっていた。手法としては、都内のタワーマンション高層階を、株式会社設立後、時価10億円で購入。このときの10億円の資金は自己資金5億円と借入金5億円。相続税評価額は、購入価格の40~50%評価というケースもあり、この会社の株式を相続人に贈与すれば、贈与税が0円になるような極端なケースも出てくるのだ。しかも、賃貸に回し収益物件とした場合の評価は、「建物部分=固定資産税評価額×70%」とされ、底地部分である土地持分は貸家建付地であるため、その評価は路線価の約80%とされる。

こうした極端な節税が見込めるタワマンとあって、税の専門家である税理士の間からは、購入価額に対して、財産評価通達通りに評価すると固定資産税が極端に低くなるのは問題との意見が出されていた。

そのため今回の見直しでは、地方税法を改正し、高層階ほど税負担を重くする方針。マンション1棟の税額はこれまで通りに算出するが、高層階の所有者には税額負担を増やし、低層階の所有者には低くする見通し。今後新築される20階建て以上のマンションを対象とする予定だ。

不動産経済研究所がさきごろ発表したタワーマンションに関する報告書によれば、2016年以降の完成見込は全国で238棟、延べ8万8944戸とのこと。首都圏で145棟・6万5012戸、近畿圏で45棟・1万3984戸、その他48棟・1万848戸。完成年次は、16年が40棟・1万3720戸、17年が54棟・1万8285戸、18年48棟・1万3336戸、19年38棟・1万4015戸、20年以降が58棟・3万488戸となっている。