2017年1月より「医療費控除の特例」としてスタートした「スイッチOTC薬控除(セルフメディケーション税制)」。これまでの医療費控除制度では、年間の自己負担額が10万円を超えなければ、控除の対象外でしたが、2017年1月からの5年間は薬局などで市販されている対象医薬品の合計額が年間1万2千円を超えるとき、確定申告により所得控除ができるようになります。

スイッチOTC薬控除(セルフメディケーション税制)の目的

世界保健機関(WHO)によると、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されています。これは、国民一人ひとりが自身の健康に責任を持ち、適切な健康管理を推進することが重要との観点から創設されました。

スイッチOTC薬とは、これまではカウンター越し(Over The Counter)に販売されていた医療用医薬品が、成分の有効性や安全性などに問題がないと判断され、店頭販売ができる一般用等医薬品に転換(スイッチ)された医療薬のこと。医療用医薬品からスイッチOTC薬への代替を推進し、年々増大する国民医療費を抑制する目的もあります。

対象医薬品は1525品目。対象・対象外の区別は共通識別マークで

対象のかぜ薬や胃腸薬などの医薬品のパッケージには共通認識マークが貼付されます。

以下のURLからも対象医薬品を確認できます。

▼厚生労働省 「セルフメディケーション税制対象医薬品 品目一覧」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000139974.pdf

なお、このリストは、2016年8月17日に公表されたものです。今後、追加や修正がある可能性もありますから、内容についてはその都度確認しましょう。

スイッチOTC薬控除(セルフメディケーション税制)の適用要件

以下に該当する人が、2017年1月1日以降、対象医薬品を年間1万2千円以上購入した際に、1万2千円を超えた金額について所得控除を受けることができます。

☑ 所得税や住民税を納付している
☑ 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、予防接種、定期健康診断(事業主健診)、健康診査、がん検診などの定期健康診断を受けている

ただし、上限金額は8万8千円です。

控除額はどれくらい?

例えば、課税所得400万円の人が対象医薬品を2万円分購入した場合。

【対象医薬品の購入金額:2万円 - 下限額:1万2千円=8千円】

が課税所得から控除されます。つまり、

【控除額:8千円×所得税率:20%=所得税:1600円
【控除額:8千円×個人住民税率:10%=個人住民税:800円

トータルで2400円の減税になります。
8万8千円を超えるときは総所得から8万8千円が控除されます。

既存の医療費控除との併用は不可

この制度は医療費控除の一部であるため、従来通り、1年間の自己負担が10万円を超えた分の医療費控除を受けるか、スイッチOTC薬控除を受けるかは個人の判断にゆだねられます。同時に利用することはできないので、注意を。

確定申告には領収書またはレシートが必要

控除を受けるには、既存の医療費控除の時と同様、購入した医薬品が控除の対象となるスイッチOTC医薬品であることを証明するレシートや領収書などの書類を添付し、確定申告します。厚生労働省は、確定申告に添付する書類は控除対象商品の有無が一目でわかるようにする必要があるとし、以下の5つが明確に分かればレシートでも領収書でも可としています。

① 商品名
② 金額
③ その商品がスイッチOTS薬(セルフメディケーション税制対象商品)である旨
④ 販売店名
⑤ 購入日

その都度、店員さんに領収書をお願いするのも大変ですが、レシートの場合は、他の購入商品も印字されることや店舗により様式もさまざま。購入品がまとめて印字される場合は、控除対象品目の前に「★」マーク等を付し、「★はセルフメディケーション税制対象商品」とレシートに記載するなど、控除対象商品である旨が明確にわかるようにすることが大切です。

※記事の情報は2016年12月現在のものです。

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