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国税局、税務署が国際税務で目を付ける調査ポイント

平成29年度税制改正の目玉の一つに、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の改正がある。今後はさらに、企業のタックスヘイブンに関する包囲網ができあがっていくが、国税当局では企業の海外取引をはじめとした国際税務について厳しいチェックを行っている。一体、どんな企業が調査対象になりやすいのだろうか。

基本的に国税当局は、資本金1億円以上の企業を大法人と定め、国税局が担当、それ以外の中・小法人を税務署所管法人としている。その税務署所管法人についても最近、海外取引に関する監視の目を光らせている。即刻、税のペナルティを課すケースは少ないものの、情報収集を行いながら、不透明な取引や税務処理などで問題が浮上してくれば調査に移行する。国税OB税理士などの話を総合すると、国税当局が中小企業の国際税務で注視しているのが、グループ会社間での取引価格を操作して利益を国外に移転させたり、赤字の子会社を支援するために経済的利益を無償で供与する手口だ。一般的な手法だけに、国税当局では必ず確認する項目と言う。また、「海外の関連会社を利用して、簿外資金や受注工作資金を捻出するといった不正行為も多いだけに、調査では、国外関連者を有する法人を重点的にチェックする」(都内税務調査官)としている。

海外関連資料の多い法人を注視

「国外送金等調書」も有力な情報収集手段の一つとなっている。同調書は、金融機関などを使い、国外送金または、国外からお金を100万円以上送ってもらうと、金融機関が税務署に提出する。国税当局では、同調書から、タックスヘイブン国に多額の送金がある場合や、法人の代表者の個人口座に海外からの送金がある、海外への送金目的が「使用料」など、源泉徴収が必要なものが散見されると、「あやしい取引」として、取引内容を確認し、疑問があれば調査に移行する。
具体的には、まず「タックスヘイブン国に多額の送金がある場合」だが、タックスヘイブン国を使った租税回避が行われていないか検討される。また、同時に持株割合についても調べるほか、タックスヘイブン対策税制の適用があるか否かについてもチェックされる。
「法人の代表者の個人口座に海外からの送金がある」場合も要チェック項目だ。この場合、法人の国外のお金の流れのみならず、法人の代表者個人の国外送受金はすべてチェックされる。もし、代表者個人の預金口座へ国外企業からお金が入金されていれば、法人の収入に計上すべきものを個人口座へ入金させ、法人収入から除外していないか検討される。よくあるケースとしては、「海外取引に係るコミッション等のお金を除外していることがある」(都内税務調査官)。
海外送金目的が「使用料」となっているケースでは、源泉徴収が必要なため、国税当局は著作権や工業所有権の使用料、機械等のリース料の支払いなど、源泉徴収が適切に行われているかを入念にチェックするようだ。

勘定科目内訳明細書は調査ネタの宝庫

このほか、国税調査官によれば、勘定科目内訳明細書は調査材料を探すネタの宝庫と言う。例えば、外国企業に対し、多額の買掛金や未払金が計上されている場合、この情報から調査官は、外国企業に対する架空仕入れや架空のコミッションなどを疑うとしている。
投資有価証券や出資金の欄に海外法人名が記載されている場合も、調査官は、持株割合等から、この法人代表者等が国外関連者かどうかを確認する。もし、国外関連者に該当すれば、移転価格税制や国外関連者に対する寄附金の適用の有無について検討を進めるそうだ。
また海外法人の所在地がタックスヘイブン国にあれば、「節税目的である可能性が非常に高いため、タックスヘイブン対策税制の適用を受けているか併せて確認する」(前出の調査官)としている。
海外法人を調査してきた国税OB税理士によれば、内訳明細書の記載内容に、国外関連者への貸付金や借入金がある場合も要チェックとしている。何を確認するかといえば、受取利息または支払利息の額が適正かどうかだ。海外法人が国外関連者であれば、「国外関連者に無利息または低い利率で貸し付けた」「高い利率で国外関連者から金銭を借り入れた」の可能性が高い。もしどちらかの可能性が見受けられれば、移転価格課税または寄附金課税の対象となると調査官は考える。
勘定科目内訳明細書からは、以下のような内容も調査ネタになる。例えば、海外法人からの借入金があり、利息を支払っているが、源泉所得税の納付が確認できないといったケースだ。非居住者や外国法人に借入金の利子を支払う場合、源泉徴収が必要となるが、源泉徴収漏れとなっているケースが非常に多いというのだ。
非居住者や外国法人から土地を購入し、内訳明細書に記載されている場合には、源泉所得税の納付の有無も確認される。非居住者や外国法人から日本国内にある土地等を購入した場合、源泉徴収が必要となるのだが、源泉徴収漏れとなっている企業が多く見られるためだ。
非居住者や外国法人に対して、家賃の支払があるケースでも、源泉所得税の納付確認が行われる。非居住者や外国法人に対して、日本国内にある土地や建物等の不動産の賃借料を支払うと源泉徴収が必要となるが、源泉徴収漏れとなっているケースが多いそうで、税務調査での確認事項の必須項目になっているという。

国際税務に精通した税の専門家が不足

国際税務関連調査といっても、何か特別にすごい調査方法があるというわけではない。納税者が意図的に租税回避をしていなければ、決して恐れるものではないが、問題は、適正な処理をしようと考えていても、頼れる税の専門家が極端に少ないということだ。世界的な会計事務所ネットワークに属する、いわゆる“ビッグ4”と呼ばれる日本の会計事務所は、大企業や大富豪でもなければ係ることはまずないだろう。日本国内には約3万件もの会計事務所があるものの、「国際税務」に対応できる会計事務所は、一部の大手会計事務所か、このビッグ4の国際税務部門出身で独立開業している税理士、もしくは国際税務の最前線で仕事をしてきた国税OB税理士ぐらいしかいない。つまり、国税税務に関する仕事を依頼しようと思っても、依頼先を探すのが非常に難しいというのが現状なのだ。
さらに、税理士業界を長いこと見てきて「国際税務あるある」としては、国内の法人税、所得税などをほとんど知らない税理士や公認会計士が、海外経験があるというだけで「国際税務のプロ」と名乗っているケースがるということだ。もちろん、こうした方は、英語などの外国語が堪能のため、素人からするとそれだけで仕事ができそうな感じがする。税務用語ぐらいなら、ある程度語学を学べば、誰でも覚えてしまうから、語学が堪能と言うだけで国際税務のプロと見るのは早計だ。基本的に、われわれは日本国内で納税するのであるから、国内の税法が基本である。それを知らずして、実は国際税務の専門家と名乗るのは、一般事業会社の世界だったら「過大表記」とペナルティを課せられるだろう。
異論もあるだろうが、個人的には、一番情報を持ち、国際税務の最前線で仕事をしてきた国税職員は、大きくハズレはないと思う。国税当局と言っても、国際に関係する部署は数多く分かれているから、すべてに精通しているわけではないが、自分が不得意とする分野に関しては、国税ネットワークがあるので対応はしてくれるはずだ。
経済がグローバルになる中、法人も個人も、何かしら海外取引に関係することが増えている。国際取引があれば企業規模、資産規模によらず、税務当局も監視の目を光らせていることは十分に承知しておきたい。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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