インボイス制度導入による登録国外事業者制の廃止
消費者向け電気通信利用役務の提供に係る登録国外事業者の制度は、ある意味、来る10月1日に導入されるインボイス制度を一部先取りしたような内容となっておりました。
したがって、インボイス制度導入後、登録国外事業者制度は、適格請求書発行事業者に集約され、10月1日をもって廃止されます。
このため、経過措置として、令和5年9月1日において登録国外事業者[3]であって、「登録国外事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出していない者については、令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けたものとみなされ、適格請求書発行事業者登録簿に登載されるとともに、書面によりその旨が通知されます(平28改正法附則45)。
なお、この経過措置により適格請求書発行事業者となった国外事業者については、適格請求書等に適格請求書発行事業者の登録番号を記載等することにつき困難な事情がある場合には、令和5年10月1日から令和6年3月31日までの間は、登録国外事業者名簿に記載された登録番号を記載することができるとされています。
ところで、本年10月1日以降、適格請求書発行事業者となった国外事業者が交付するインボイスは、外国語や外貨で記載されていても、インボイスに必要な記載事項さえ記載されている限り有効です。
ただし、外貨建てによる取引の場合、「税率の異なるごとに区分した消費税額等」については、円換算した金額を記載する必要があります(インボイスQ&A問66)。
消費税額等の算出に係る円換算の方法は、資産の譲渡等の対価の額の円換算の方法(基通10-1-7)と同様、所得税又は法人税の課税所得金額の計算において外貨建ての取引に係る売上金額その他の収入金額を円換算する際の取扱いの例により行うこととなります。
しかしながら、インボイスを交付するときにおいて、所得税又は法人税の例により円換算することが困難な場合は、例えば、インボイスを交付する日における換算レートや決済日における換算レート等を継続して使用するなど、合理的な方法によることとして差し支えないとされています。
また、税率ごとに区分した対価の額を円換算する際、端数処理を行うかどうかは事業者の任意とされます。
[3] 国税庁HP によれば、令和5年6月30日現在155の国外事業者が登録されている(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/cross/touroku.pdf)。
事業者向け電気通信利用役務の提供とインボイス制度
上記のとおり、インボイス制度導入後も、事業者向け電気通信利用役務の提供に係る課税仕入れ(「特定課税仕入れ[4]」といいます。)を行った国内事業者は、当該特定課税仕入れについて、リバース・チャージ方式により申告・納税の義務が課されるとともに、仕入税額控除の対象とすることができますが、一般課税で申告を行う事業者のうち、当該課税期間における課税売上割合が95%以上である事業者及び当該課税期間につき簡易課税制度が適用される事業者については、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされます。
この経過措置は、電気通信利用役務の提供に係る平成27年改正時より適用されており、若干分りにくいですが、以下のように仕訳例で考えると一目瞭然です。
【設例】内国法人A社は、外国法人B社が提供するクラウド上のソフトウエア利用サービス(事業者向け)の提供を受け、その対価1,000を支払った(税率10%、税抜処理)。
(A社の処理)
問題となるのは、仮払所費税100の取扱いですが、仮に、A社において仕入税額の全額控除が認められるとすれば、仮受消費税100から全額控除できることになり、上記仕訳例の下段の両建て処理をしない場合と結果は同じということになります。
そもそも、課税仕入れに係る消費税額の全額控除の要件は、課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95%以上ということですから、事業者向け電気通信利用役務の提供については、前者の要件を免除して、課税売上割合が95%以上である事業者については、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされる、すなわち、リバース・チャージ方式による処理は不要、ということになります。
この「当面の間」の経過措置は、リバース・チャージ方式の適用による事務負担の軽減を図るという趣旨と思われますが、インボイス制度導入後もそのままの形で維持されます(平27改正附則42)。
もちろん、課税売上割合が95%未満の事業者は、リバース・チャージ方式の適用は免れませんし、他方、免税事業者は、消費税の確定申告等を行う必要がありませんので、特定課税仕入れを行ったとしても申告等を行う必要はありません。
ちなみに、課税売上割合が95%未満の事業者が、特定課税仕入れを行い、リバース・チャージ方式を適用して売上税額(仮受消費税)と仕入税額(仮払消費税)を両建て処理する場合、当該特定課税仕入れに係る仕入税額控除の適用に際して、インボイスは不要とされます(新消法30①)。
[4] 特定課税仕入れには、国内において国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」のほか、「特定役務の提供」が含まれるが、「特定役務の提供」とは、外国人タレント等が国内で行う演劇、コンサート等の役務の提供をいう(法2①八の二、八の五、4①、5①)。
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