高すぎる大学等の教育費

また、大学教育に係る経済的負担が大きいという点も米国における教育の特徴の一つであるといえましょう。ここ20年間の大学学費の上昇率は非常に高く、学費インフレ率は7~9%ともいわれ、今や大学教育は一般庶民にとって高すぎるものになっているといいます(有名私立大学では、1年にかかる学費や生活費などの総額は約7万ドル(約784万円)といわれ、比較的安価な州立大学でも、年間3万ドル(約336万円)はかかるといわれます。)。大学進学にハードルがあることからすれば、当然ながら、さらにその先の大学院への切符を手に入れられるのは、経済的に恵まれた一部の者に限られるということになるわけです。

さて、米国における初・中等教育はいわゆる詰め込み式暗記教育ではなく、創造力を育てる教育であるといわれるとおり、基本的知識レベルが必ずしも高いわけではないといわれることがあります。より良い大学あるいは大学院を卒業すれば、比較的有利な就職ができる可能性がある反面、高卒者は、就職にかなり苦労してしまうといいます。これは多言語を理解する移民と比較して彼らが劣後することを意味しているともいえましょう。

このように、小、中、高、大学、大学院のレベルにおいて、経済的な要因が大きく影響し、ひいては、そのまま就職チャンスの問題に接続することになるため、この教育格差が経済格差を一層助長させるのです。その遠因が州や郡レベルの固定資産税の税収の格差にあるというのですから、問題の根源の1つは税制であるということです。

参考文献:

「それでもトランプ支持!」が減らない理由。授業から体育や音楽がなくなっちゃうから? 米大学日本人教授の渾身論考

〔平成29年2月9日訪問〕