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酒井克彦の「税金」についての公開雑談~教育への投資促進と税制~

所得格差や資産格差は今日の我が国が抱える最重要な社会問題であるといっても過言ではありません。その根底には教育格差の問題が存在していると思われます。今回は、所得税法における「勤労学生控除」を改組して、教育資金負担者に関する同法上の控除を設ける提案をしたいと思います。

教育格差―問題の所在―

教育格差は意識格差とも指摘されています(平成29年1月29日付け日本経済新聞)。すなわち、例えば、家庭での勉強に向き合う環境の整備や、親が子供の前で普段から本を読んでいるかどうかなどが教育格差を論じるときの重要なファクターであるとの指摘です。この指摘はもっともであると思われますが、そうはいっても、教育格差の問題解決のためには、やはり教育資金をどうするかが現実的な問題として議論されるべきであり、いかに意識格差是正の重要性を論じたとしても、教育資金の問題を解決できない限り、この教育格差を解消することはできないと思われます。

トランプ政権が米国で支持されているのは、いわゆるプア・ホワイトと呼ばれる、白人低所得者層の鬱積したフラストレーションがその背後にあるといわれています。高校を卒業した後、多額の費用がかかることから大学への進学をあきらめざるを得ない若者が、移民との職場獲得競争に負けるという構図の下、多くの貧困層が生み出されているのは周知のとおりです。教育格差が所得格差を招来し、結果、多くのフラストレーションが仕事を奪う移民に向けられているという現実がそこにあるのです。

移民問題という点では我が国にこのような米国の状況をそのままトレースすることはできないと考えますが、我が国においても所得格差を招来する教育格差を放置しておくわけにはいきません。

OECD(経済協力開発機構)は、2014年に発表した「特集:成長と格差」(Focus on Inequality and Growth)において、「富裕層と貧困層の格差は今や大半のOECD諸国において過去 30 年間で最も大きくなっている。このような所得格差の趨勢的な拡大は、経済成長を大幅に抑制している。所得格差の全般的な拡大は、他の所得層を大きく引き離している1%の超富裕層にも牽引されているが、成長にとって最も重要なのは、置き去りにされている低所得の世帯である。格差の成長に対するマイナス影響は、貧困層ばかりでなく、実際には下位40%の所得層においても見られる。これは、とりわけ社会的背景の貧しい人々は教育に十分な投資をしないためである。租税政策や移転政策による格差への取り組みは、適切な政策設計の下で実施される限り、成長を阻害しない。特に、再分配の取り組みは、人的資本投資に関する主要な決定がなされる対象である子どものいる世帯や若年層を重視するとともに、生涯にわたる技能 開発や学習を促進すべきである。」と指摘しています。

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