ルノアール事件

また、いわゆるルノアール事件という事案があります。これは、絵画取引の仲介手数料収入を除外して確定申告をした納税者が、その後修正申告をしたところ、税務署長が重加算税賦課決定処分を行ったため、その取消しを求めた事案です。

控訴人(納税者)は、自らが提出した修正申告書は、国税通則法65条《過少申告加算税》5項にいう「その申告に係る国税についての調査」がない時点において、自発的にその修正申告書が提出されたものである旨を主張しました。

すなわち、控訴人は、自身が国税当局に対し自発的に修正申告を行う意思表示をした当時、国税当局のそれまでの調査によっても、ルノアールの「浴後の女」「読書をする女」の売買取引に控訴人が介在した事実及び控訴人の仲介手数料収入の存在を発見することが困難であり、また、国税当局が仮名口座であるE名義口座の存在を突き止めていたこと等の事実があったとしても仮名口座であるE名義の銀行口座が誰に帰属するのかについて全く手がかりもなく解明できなかった状況にあったなどと主張したのです。

また、本件絵画取引に控訴人が介在していた事実を国税当局が発見すべくもなく、控訴人がその事実が発見されることを危倶する状況にはない時点において、上記の自発的な修正申告の申し出をしたのだから、控訴人に「更正の予知」はあり得ない旨を主張しました。

これに対して、 東京高裁平成14年9月17日判決(訟月50巻6号1791頁)は、「本件規定〔筆者注:国税通則法65条5項〕にいう『調査』とは、修正申告の対象となった特定の国税についての『調査』でならなければならないが、課税庁が当該納税者を具体的に特定した上でする直接的な調査でなくても、当該調査が、客観的にみれば当該納税者を対象とするものと評価でき、納税者が自らの申告に対して更正のあるべきことを予知できる可能性があるものである限り、同『調査』に該当するというべきであるところ、本件においては、…税務職員が、申告に係る国税についての調査に着手してその申告が不適正であることを発見する端緒となる資料を発見したということができるから、客観的にみれば控訴人自身に対する調査が着手されていると評価することができる。」と判示し、納税者の主張を排斥しました。

すなわち、国税通則法65条5項にいう「調査」とは、修正申告の対象となった特定の国税についての「調査」でなければなりませんが、課税庁が当該納税者を具体的に特定した上でする直接的な調査でなくても、当該調査が、客観的にみれば当該納税者を対象とするものと評価でき、納税者が自らの申告に対して更正のあるべきことを予知できる可能性があるものである限り、同条項のいう「調査」に該当するとしたのです。

ルノアールの絵画は、租税紛争の種になるようですね。