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国税庁 豊洲市場移転延期で固定資産の税務処理など明らかに

“東京の台所”と言われる、東京都中央卸売市場の築地から、豊洲への移転問題が依然として決着しない中、東京都は2017年に入り、市場業者への移転延期に伴う費用の損失補償を始めた。一方で国税庁は、豊洲市場に設置したものの、いまだ使用していない固定資産の取扱いや、移転延期に伴う東京都からの補償金の税務処理について明らかにした。

移転予定から7カ月過ぎても結論出ず

2016年11月7日に予定されていた、東京都江東区豊洲への東京都中央卸売市場の移転は、小池百合子東京都知事の移転延期及び築地市場の解体工事延期を受けていまだストップしたままだ。一方で、延期決定が開場約2カ月前であったことから、すでに市場には、移転予定だった卸売業者などの「大型冷蔵庫」や「低温空調設備」、仲卸業者の「フォークリフト」や「ダンべ(冷凍ストーカー)」などの設置・備品等の搬入も済み、設置早々に電源を入れている冷蔵庫もある。

4月から補償金の支払開始

移転準備状況には差があるものの、総じて市場業者の被害は大きい。このため、2017年に入り小池百合子知事は1月27日の定例記者会見で、豊洲市場の移転延期に伴う市場業者への補償の枠組みを明らかにし、2月から3月にかけて市場業者への説明会や個別相談などを行い、これまでに係る補償金の支払いを4月から始めている。補償範囲は、移転延期による直接的な損失とされ、市場業者が豊洲市場で設備を利用できない期間に生じる費用や損失、築地市場にある老朽設備の修繕など追加的に生じる費用(経常費用除く)、築地の冷蔵庫故障等に伴い豊洲の設備を築地に移転する場合の移設費用などが対象とされているが、すでに豊洲市場への総投資額は約300億円、4月に支払った補償費だけでも9億円といわれており、これらの財源には当然に税金も投入されている。

国税庁が移転延期に伴う課税上の取扱いを公表

一方、市場業者からは、豊洲市場への移転延期に伴い新たに設置等した固定資産の減価償却や評価損の取扱い並びに補償金の課税関係など、税についての相談も多く寄せられている。このため、国税庁はさきごろ、市場関係者や税理士会などへ取扱い等を明らかにした。

取得した固定資産を事業の用に供している場合には、減価償却費を法人の場合は“損金”に個人事業者の場合は“必要経費”に算入することができるが、豊洲市場にある大型冷蔵庫や低温空調設備といったものは、開場を見越して搬入と同時に電源を入れてあっても中は空っぽ状態。実際に市場が開場され使用されておらず“事業の用に供している”とはいえないため、これらが減価償却できるのかとの疑念が生じていた。

これについて国税庁は、(大型)冷蔵庫の場合、通電することにより冷蔵する機能を発揮している状態となるので、食品等が入っていなくても本来の目的のために使用していると認められる、つまり事業の用に供しているとして損金(必要経費)に算入できるとしている。もちろん、損金算入には償却費として損金経理を行う必要はある。

一方、固定資産で、事業の用に供されていないものの取扱いについても、現在の豊洲市場は、法人税法施行令68条(資産の評価損の計上ができる事実)の1項3号ニにある『当該資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと』に当たるとの認識から、移転延期に伴い価値が減耗していることにより、事業年度終了の日における価額(時価)が帳簿価額を下回る場合には、東京都の補償基準に従って計算される価値減耗相当額を評価損として損金算入できるとした。具体的には、東京都の価値減耗額が税法上の法定耐用年数を援用(定額法)することとされることから、定額法を用いて損金算入額を求めることとなる。この場合も評価損の損金経理を行わなければならない。ただし、気を付けたいのは、この評価損の損金経理の規定は法人にはあるが、個人事業者については規定がないことだ。

補償金は、法人が「益金算入」、個人が「非課税所得」で処理

東京都では4月以降、平成28年度分(平成28年11月から29年3月)についての豊洲市場の移転延期に伴う補償金を支払っているが、受け取った補償金の課税関係はどうなるのだろうか。まず、法人事業者が受領する補償金については、「その支払を受けることが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入」することになる。

次に、個人事業者が受け取る補償金については、移転延期に伴う財産的損害を補填するものであることから、原則として「所得税法上の非課税所得」に該当する。なお、豊洲市場に設置した設備のうち事業の用に供していると認められるものは、法人事業者と同様に必要経費として減価償却費が認められることから、減価償却費として必要経費に算入される金額を補填するための補償金は、非課税所得に該当しないこととなり、補償金の額をその支払を受けることが確定した日の属する年分の収入金額に算入する。

ちなみに「その支払を受けることが確定した日」とは、「補償金の交付決定通知日」となる。

著者: イーター侍

税金ライター/元税金専門誌編集者

四半世紀以上、税金専門誌の編集者として国税庁、国税局、税務署、会計事務所に出入りする。数年前に独立した後、編集者時代に築いた人脈をいかし、ネットワークビジネスを手がける。その傍ら、趣味と副業を兼ねて税務関係ニュースを追いかける“中年ライター”だ。

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