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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:平成29年度税制改正③ タックスヘイブン対策税制の見直し(Part1)

タックスヘイブン(tax haven)とは、「租税回避地」の意味で、一般的には税負担のない国又は税負担が著しく低い国や地域を指しています。ケイマン諸島やバミューダ、香港等がタックスヘイブンとしてよく知られています。タックスヘイブン国に子会社を設けた場合、タックスヘイブン対策税制の対象となる可能性があります。平成29年度税制改正では、日本企業の海外展開を通じた国際競争力の強化の維持、租税回避への対応といった政策的要請を踏まえ、制度が抜本的に見直されました。

1 改正前の制度の概要

「タックスヘイブン対策税制」とは、税の著しく低い国、つまりタックスヘイブン(租税回避地)に所在する外国子会社を利用した租税回避を抑制するために、一定の税負担の水準(いわゆるトリガー税率(20%))未満の外国子会社の所得を、日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度です(「会社単位の合算課税」といいます)。

ただし、正常な海外投資活動を阻害しないため、所在地国において独立企業としての実体を備え、かつ、それぞれの業態に応じ、その地において事業活動を行うことに十分な経済合理性があると認められるものとして一定の要件(適用除外基準)をすべて満たす外国子会社等は適用除外とされていました。適用除外基準には次の4つがあります。

(1)事業基準
(2)実体基準
(3)管理支配基準
(4)非関連者基準または所在地国基準

2 改正の背景

改正前の制度では、外国子会社の租税負担水準が20%(トリガー税率)以上であれば経済実体を伴わない所得であっても合算対象外となる一方で、実体ある事業から得た所得であっても合算課税されてしまうケースもありました。例えば、一定の航空機リース事業等のように、実体のある事業から得た所得であっても会社単位で合算課税される場合があり、制度の問題点として指摘されていました。

そこで、平成29年度税制改正においては、「外国子会社の経済実態に則して課税すべき」とする「BEPSプロジェクト」の基本的考え方を踏まえ、経済実体がない受動的所得(積極的に関わらなくても継続的に入ってくる収入)は合算対象とする一方で、実体がある事業からの所得であれば子会社の税負担率にかかわらず合算対象外とする方向で、制度が見直されました。

3 主な改正点

主な改正点として、以下のものが挙げられます。

(1)合算対象とされる外国法人の判定方法の見直し
(2)ペーパーカンパニー等の会社単位の合算課税制度の創設
(3)会社単位の合算課税の「適用除外基準」を「経済活動基準」に改め、要件を見直し
(4)受動的所得の部分合算課税制度の拡大

なお、上記の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

 


改正点1 合算対象とされる外国法人の判定方法の見直し


今回の改正により「実質支配基準」が新規に導入されました。これにより、資本関係がなくても、内国法人等が外国法人の残余財産のおおむね全部を請求することができる等、実質支配関係がある外国法人も対象に加えられることとなりました。


改正点2 ペーパーカンパニー等の会社単位の合算課税制度の創設


今回の改正により、一見して明らかに受動的所得しか得ていない「ペーパーカンパニー」「事実上のキャッシュボックス」「ブラックリスト国所在のもの」などの3つの類型に当てはまる外国関係法人で、租税負担割合が30%未満である場合、原則として合算課税の対象とされました。

▼「ペーパーカンパニー」・・・事務所等の固定施設を持たず、本店所在地国においてその事業の管理・支配・運営を自ら行っていない外国関係会社をいいます。
▼「事実上のキャッシュボックス」・・・総資産の額に対する受動的所得の金額が30%を超え、かつ、総資産に対する有価証券、貸付金、固定資産、無形資産等の合計額の割合が50%を超える外国関係会社をいいます。すなわち、通常の事業を十分に行っておらず、受動的所得が多い外国関係会社が該当します。
▼「ブラックリスト国所在のもの」・・・租税に関する情報交換に非協力的な国又は地域として財務大臣が指定する国等に本店等を有する外国関係会社をいいます。

 

(次回に続く)

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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