前回に引き続き、タックスヘイブン対策税制の改正の概要を説明します。従来の制度では「適用除外基準」と呼ばれていたものが「経済活動基準」と名前を変え、一部要件も見直されました。また、「経済活動基準」を満たしたとしても「受動的所得」があれば合算課税される場合もあります。今回の改正では、この「受動的所得」の範囲が広がりました。これらは裁判等の争点となることも多く、実務上は非常に重要な点です。

3 主な改正点(続き)

改正点3 会社単位の合算課税の「適用除外基準」を「経済活動基準」に改め、要件を見直し

従来の合算課税の「適用除外基準」を「経済活動基準」と名称を改め、要件の一部を見直しました。「経済活動基準」のいずれかを満たさない外国関係会社は、会社単位の合算課税の対象となります。改正後の「経済活動基準」とは次のものをいいます(下線部は改正点)。

①事業基準…主たる事業が株式の保有、知的財産権の提供、船舶・航空機リース等でないこと。ただし、一定の要件を満たす航空機リース会社は除かれます。
②実体基準…本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること。
③管理支配基準…本店所在地国において、事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること。
④非関連者基準又は所在地国基準

・非関連者基準(卸売業、銀行業などが対象)…関連者以外の者との取引(非関連者取引)が全体の50%以上を超えていること。ただし、非関連者取引において取引対象となるものが、関連者に移転等されることがあらかじめ定まっている場合には、関連者との間で直接行われた取引とみなします(第三者を介在させることで、非関連者基準を形式的に満たすケース等に対応するため)。

・所在地国基準(主たる業種が上記以外のものが対象)…主として本店所在地国で事業を行っていること。なお、本店所在地国以外で製品の製造を行っている場合であっても、本店所在地国において「製造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与している場合」は、製造業に係る所在地国基準を満たすこととします(これにより、いわゆる「来料加工」は所在地国基準を満たすこととなると考えられます)。

(4)受動的所得の部分合算課税制度の拡大
租税負担割合が20%未満の国に所在する子会社の場合、上述の経済活動基準を満たした場合であっても、一定の「受動的所得」を有する場合には、合算課税されることになっています(部分合算課税制度)。今回の改正では部分合算課税の対象となる「受動的所得」の対象範囲が拡大しました。
受動的所得には以下のものが該当します。

4 改正後の外国子会社合算課税の全体像

今回の税制改正後のタックスヘイブン対策税制の全体像は、以下の通りとなります。

改正前の制度では、入口の基準として、外国関係会社の租税負担割合がトリガー税率(20%)以上である場合には合算対象外となりました。改正後はこのトリガー税率が廃止されました。
そのため、まず外国関係会社が『ペーパーカンパニー等』に該当するか否かの判定を行い、『ペーパーカンパニー等』に該当しない場合には経済活動基準を満たすかどうかの判定を行います。経済活動基準のすべてを満たす場合には『一定の受動的所得の合算課税』の対象となり、経済活動基準のいずれかを満たさない場合には『会社単位の合算課税』の対象となります。

ただし、納税者の事務負担増に対する配慮から、租税負担割合が20%以上の場合には合算課税の適用が免除されることとなりました。その意味では、従来のトリガー税率の考え方が残っていると言えるでしょう。