最近は、中小企業経営者向けの、視察ツアーが増えてきた。こうした、海外渡航で気をつけたいのが、経営者等の会社役員、もしくは従業員が使った「海外渡航費」の税務処理だ。税務調査では必ずチェックされるので、否認されないための準備をしておきたい。
国税OB税理士によれば、「海外渡航費に対する税務調査は、基本的には国内出張の旅費の場合と同様に行う」ようだ。
税務署の調査官が、出張旅費のどのような部分を重点チェックしているのかというと、業務の遂行上、通常必要と認められる経費なのかという点。結果として業務の遂行上、通常必要と認められれば、法人の旅費として経費処理が認められる。つまり、海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであり、その負担金額が通常必要と認められる範囲内であれば、税務調査においてもとくに問題視されない。
しかし、実際の海外出張となると、空いている時間を利用して観光ということも多く、それを海外渡航費として処理してよいのか悩みどころだ。
海外渡航費については、業務上必要な部分と業務上必要でない部分とに分けることが重要だ。税務調査においても、「海外渡航費」に該当する「観光旅行」なのかをチェックする。
「観光」がある場合、会社の業務上必要と認められない部分の金額となり、単純な旅費ではなく渡航者本人に対する給与になる。源泉所得税の課税対象だ。しかも、渡航者が役員である場合は、臨時的な役員給与として損金に算入されない。
なお、参考までに、同業者団体等が実施する、海外視察等の機会に併せて観光が行われるケースでは、この海外渡航費は、業務従事割合を基準として算出される損金算入割合によって計算する。
税務処理的に見た、海外渡航費に関してのチェックポイントは、損金算入が認められるのは、海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであり、そのために通常必要と認められる部分の金額に限られる。
また、「業務」と「観光」が合わさった海外渡航の場合、業務と観光の区分を明確に分け、共通的に要した経費については業務を行った日数と観光を行った日数との比などによってあん分する。ただし、外国の休日とされる土曜、日曜に行った一般的な観光は、観光を行った日数に含めなくてよいだろう。
さらに、海外渡航費のうち、法人の業務の遂行上必要と認められない部分がある場合、超える部分の金額は、渡航者に対する給与となるため、源泉所得税の課税対象とする必要がある。また、渡航者が役員なら役員給与として損金不算入の処理が必要になる。
最後に、海外視察や海外出張などの渡航費は、税務調査で指摘されないように、法人の業務の遂行上必要であることが分かるような、渡航報告書やパンフレット等を関係資料として残しておくことが重要だ。