滞納残高はピーク時の3割程度に減少

平成29年3月末における滞納整理中のものの額(滞納残高)は、新規発生滞納額よりも滞納整理済額が上回ったことから、前年度より8.2%減少の8971億円となり、18年連続で減少した。なお、ピーク時の平成10年度(2兆8149億円)と比べると実に31.9%にまで圧縮されている。

*平成28年度の主な滞納処分事例は、次のとおり。
(1)外国籍滞納者の海外資産を調査し多額の現金を差押え
X国籍の滞納者は、実父が所有していた国内及びX国の財産を相続したが、X国の相続財産についての申告漏れを指摘されたため修正申告を行った。しかし、X国に居住する他の相続人との遺産分割協議が整わず、納税資金が用意できないとして多額の滞納を発生させていた。そして、税務職員の納付催告に対しても、国内の相続財産だけでは滞納額を完納できないとの主張を繰り返すとともに、遺産分割協議のめども立たなかったため、国内の相続財産を差し押さえ、X国から国内への資金の流れの調査を行った。

その結果、X国内の滞納者名義の株式から毎年数億円の配当金が支払われており、その配当金が国内金融機関に送金されていることを確認したため、滞納者の貸金庫を捜索したところ1億円以上の現金が入っていた。直ちにその現金を差し押さえ滞納税額に充当し、残額も自主納付させている。

(2)滞納者が自宅を長女に名義変更したため詐害行為取消訴訟で解決!
ブロック工事業を営む滞納者は、税務調査の際に売上除外の指摘を受けったため所得税等の修正申告を行ったものの、修正申告時点で自宅不動産以外に財産をもっておらず、さらに多数の債権者から財産価額以上の債務を負っていたことから、滞納国税を一括で納付する資金がないため税務職員に自宅不動産を担保に提供することを申し出た。しかし、一向に自宅不動産の担保手続きが行われないため税務職員が不動産登記の確認を行ったところ、債務者の一人である滞納者の会社の経理担当をいていた長女に登記名義を移していたことがわかった。さらに調査したところ、長女から借り入れは返済期限のなくすでに7年間も返済していなかったにも関わらず、国税を納付することができなくなることを知りながら自宅不動産を長女に譲り渡していたことを突き止めた。

このため国税当局は、多数の債権者の中であえて長女に抜け駆け的にした返済は、民法424条の他の債権者を害する行為に該当する判断。長女を被告とする詐害行為取消訴訟を提起し、勝訴判決を受けたことから自宅不動産を滞納者名義に戻した上で差し押さえて滞納税額を徴収した。

(3)従業員の口座に工事代金を振込ませ財産を隠匿したため、滞納処分免脱罪を適用
土木建築業の滞納法人は、源泉所得税等の滞納について、国税局に具体的な納付計画を提示しないまま滞納を増やし続けていたことから、取引先に対する工事代金債権を差し押さえた。しかし、その後の調査の結果、滞納法人の代表者は取引先からの取引打ち切りを懸念して実在しない架空法人の名称や従業員の個人事業用屋号を利用して事業を継続していることのほか、取引先に請求書を送付する際に、取引先の担当者に対して振込先を従業員名義の預金口座に変更するよう依頼し、滞納法人が行った事業に係る工事代金約6500万円を計30回にわたり振り込ませていたことを把握した。

国税局では、振込先を他人名義の預金口座に変更しその口座に工事代金を振り込ませた行為は、滞納処分免脱罪の滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠ぺいに該当すると判断し、滞納法人の代表者を滞納処分免脱罪で告発した。