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酒井克彦の「税金」についての公開雑談~税務官吏と印象派絵画~

世の中には、「名画」と呼ばれる絵画が多々あります。誰もが一度は目にしたことのあるような名画に、オークションなどで非常に高額な値段がつくこともしばしばです。他方で、例えば、時代や世間にはなかなか認められないような現代アートに魅了される人もいることでしょう。そういう意味においては、絵画など美術品の「本当の価値」を判断することはそもそも不可能なのかもしれませんが、課税実務においては何らかの「評価額」を付さなければならない局面があります。今回は印象派絵画を愛した税務官吏ショッケのお話とともに、絵画の評価額について争われた事例を紹介します。

絵画を愛した税務官吏

ルノワール(ピエール=オーギュスト・ルノワール:Pierre-Auguste Renoir)の描いた「ショッケの肖像」をご存知でしょうか。「ショッケの肖像」をご存じない人でも、そのショッケの妻を描いた「ショッケ夫人」をご覧になったことのある人は多いのではないかと思います。

セザンヌ芸術の最大の理解者であるともいわれているショッケ(ヴィクトール・ショッケ:Victor Chocquet)は、当時批判の強かった印象派の絵画に大きな興味を抱き、ルノワールを介してセザンヌ(ポール・セザンヌ:Paul Cézanne)と出会いました。ロマン派を発展に導いたドラクロワ(フェルディナン・ヴィクトール・ウジェーヌ・ドラクロワ :Ferdinand Victor Eugène Delacroix)を互いにリスペクトしていたことから両者は友人となり、ショッケはセザンヌ作品の収集をするようになったといわれています。ショッケの励ましがあって、セザンヌは第3回印象派展(1877年)に肖像画、風景画、静物画、動物画などの油彩、水彩を出品したといわれているくらいですから、ショッケの影響は小さなものではなかったといえそうです(新関公子 『セザンヌとゾラ―その芸術と友情』(ブリュッケ2000))。

印象派が世間から見向きもされていなかった当時を思えば、ショッケの先見の明は素晴らしいものであったといえます。ところで彼は税関で文書係を務める税務官吏でした。

なお、税務官吏出身の画家といえば、ほかにも有名なアンリ・ルソー(アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソー:Henri Julien Félix Rousseau)がいますね(ルソーについてはまた機会を改めて雑談するとしましょう。)。

もっとも、ショッケやルソーのように絵画に造詣が深い税務官吏は珍しいのかもしれません。そういう遠因もあるのでしょうか、絵画評価に関しては問題が発生することもしばしばです。

 

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