条文に使われている用語(概念)をいかに理解すべきかという問題はなかなか簡単には解決できません。例えば、民法と所得税法など違う法律に同じ用語が使用されている場合、法律は違えど同じ用語であれば同様の意味として理解するとすれば、法的安定性や予測可能性が担保されることになります。しかし、そのように単純に考えればよいというわけでもありません。ここでは、国税通則法が用いている「正当な理由」という概念について考えてみましょう。

軍服着用の正当な理由
ハロウィンの仮装もすっかり毎年の恒例行事となり、今年も各地で様々なイベントが開催されたと話題になりました。さて、ハロウィンの仮装を巡っては、以前、人気アイドルグループの「欅坂46」がライブで着ていた衣装についてナチス・ドイツの制服に酷似していると、インターネット上で批判が集まったことがありました。同グループはハロウィンに合わせたライブイベントに出演。その際、ワシのような紋章を付けた黒い帽子、黒いマントの衣装で登場したというのです。この騒動については、英大衆紙「デイリー・メール」(電子版)や「デイリー・ミラー」(同)など海外メディアも報じていました。例えば、デイリー・ミラーは「第2次大戦時のナチスの兵士の制服に似た衣装がファンにショックを与えた」などとし、イベントの様子を報じたテレビ番組の動画付きの記事を掲載しています(朝日新聞2016年10月31日付けデジタル版)。
ところで、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法(昭和27年5月7日法律第138号)には、「制服を不当に着用する罪」が設けられており(同法9)、同条では、「正当な理由がないのに、合衆国軍隊の構成員の制服又はこれに似せて作つた衣服を着用した者は、拘留又は科料に処する。」とされています。要するに、米軍の制服を正当な理由なく着用すると、1日以上30日未満、刑事施設に拘置するという拘留(刑法16)か、1,000円以上1万円未満の科料に処されるのです(刑法17)。
すなわち、米軍の軍服を着用するには、「正当な理由」がなければならないというわけです。