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酒井克彦の「税金」についての公開雑談~制服の着用と「正当な理由」~

抽象的な概念である「正当な理由」

ここにいう「正当な理由」とは、どのような理由をいうのでしょうか。実定法上の概念のうち、その文言上の意味を理解することが明確とはいえない抽象的な概念のことを、「不確定概念」などといいますが、その概念の意味するところを解き明かすのは必ずしも容易ではありません。

ただ、その概念の意味するところを解釈するに当たって、いくつかの糸口があります。
例えば、一般に法律関係において要請されている法的安定性や予測可能性を念頭に置けば、同じ用語が他の法律において使用されている場合、その他の法律における概念の理解に合わせて解釈をすべきという考え方が導出されます。

上記の「正当な理由」についていえば、国税通則法65条《過少申告加算税》ないし67条《不納付加算税》の加算税免除規定としても使用される概念ですから、これらの条文にいう「正当な理由」と同義に解するべきという考え方もあり得ないわけではありません。なお、一般に、これらの条文にいう「正当な理由」とは、しばしば納税者に帰責性がないとか不可抗力的な場合を指すとされ、例えば、税務署職員の誤指導によって誤った申告がなされた場合などには、「正当な理由」があるとして加算税が免除されると解釈されています。それでは、上記の米軍の制服を「正当な理由」なく着用した場合においても同様に理解すべきなのでしょうか。しかしながら、帰責性がないとか不可抗力的に衣服を着用するという場面はなかなか想定しづらいところです。

このように考えると、不確定概念の意味するところは、法条の趣旨や目的、その概念が用いられている法条の文脈や位置付け、また場合によっては、立法当時の議論や立法の背景となった立法事実などによって確定していくほかないといえましょう。すなわち、ここにいう「正当な理由」の意味は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法の法解釈に委ねられているというべきでしょう。

そうすると、国税通則法にいう「正当な理由」に誤指導が含まれるからといって、「行政当局が誤った指導を行ったことにより米軍の軍服を着用したとき」などという摩訶不思議な解釈は当然あり得ないことになります。

著者: 酒井克彦

中央大学法科大学院教授/法学博士

中央大学法科大学院教授。法学博士。現在、税務会計論・租税法などを担当。一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。単著に『スタートアップ租税法〔第3版〕』、『クローズアップ保険税務』、『クローズアップ事業承継税制』他5冊のアップシリーズ、『所得税法の論点研究』(財経詳報社)、『裁判例からみる所得税法』、『裁判例からみる法人税法〔3訂版〕』、『裁判例からみる税務調査』(大蔵財務協会)、『レクチャー租税法解釈入門』(弘文堂)、『プログレッシブ税務会計論Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』(中央経済社)、『アクセス税務通達の読み方』(第一法規)、『キャッチアップ改正相続法の税務』、『キャッチアップ外国人労働者の税務』、『キャッチアップ保険の税務』(ぎょうせい)など。その他、論文多数。
■一般社団法人アコード租税総合研究所
http://accordtax.net/
■一般社団法人ファルクラム(FULCRUM)
http://fulcrumtax.net/

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