2017年12月後半から、金の取引価額が1グラム当たり5千円を超え、年が明けた2018年1月はこの水準を維持している。1月の第2週目には5200円にもなった金だが、平成31年10月からの消費税率10%へ引き上げを控え、さらに投資家の関心を集めている。

金取引が好調だ。2017年12月下旬から2018年1月23日まで5千円台の高値をキープしている。米国経済が好調なことや、23日は米議会でつなぎ予算案が可決される見通しとなり、投資家のリスク回避姿勢が後退したことから、金は軟調に推移したと見られる。

今後も弱い右肩上がりで金価格は上がっていくと予想されるが、日本国内において中期的にその下支えになりそうなのが、平成31年10月の消費税率10%への引き上げだ。

というのも、金取引と消費税は比例して動くことが多いのだ。

消費税はこれまで、1989年4月の「消費税導入(税率3%)」、1997年4月の「消費税率5%引き上げ」、2014年4月の「8%引き上げ」の大きな変化があった。

この3つの変化のときの金の消費の動きを見てみると、面白いことが分かる。

なぜか金の輸出量が増える

投資用の金地金は、ほとんどが輸入でまかなわれており、金消費の動きは金の輸入量に反映される。

1989年4月の消費税導入直前時には、通常月には25~30トン程度だった金の輸入量が2月に39トン、3月に41トンと大幅な増加を記録している。

1997年4月の消費税率引き上げ直前にも似たような動きがあった。

通常時で月6~8トン程度だった金の輸入量が、1月に12トン、2月14トン、3月16トンへ急増したのだ。

2014年4月の消費税率8%への引き上げに際しては、2012年8月に消費税法改正の法案が可決され、9月から取引量はグッと伸び約79万トンだったものが100万トンを超え、2013年3月には130万トンまで取引されている。その後、2013年12月までジワジワと下がり60万トンまで下がったが、翌年2月から68万トン、3月70万トンと増加している。一方で消費税法施行後は、4月59万トン、5月55万トンと減少しており、消費税が動く前には「金の消費」が急増することを裏付ける動きだといえる。

なぜ、消費税率が動く前に、金が動くかというと、それには税務の取り扱いが影響している。

「金は購入時に消費税を支払うが、売却時には消費税を受け取ることができる」という税制があるためだ。つまり、金の市況が上昇しなくても、金を保有していて、その間に消費税率がアップすれば、売却時には「消費税アップ分だけ得をする」からだ。

世のなかには多くの金融商品があるが、金は「個人が消費税の恩恵に浴することができる数少ない金融商品」とも言えるわけだ。

たとえば、金価格が1グラム当たり5千円だったとする(手数料は計算に含めない)。金地金商の店頭で、金を1キログラム購入すると、金地金代金500万円と8%の消費税40万の合計540万を支払うことになる。

金を保有している間に消費税率が10%にアップ。そこで金を売却するとなると、金地金の売却代金は500万円ですが、消費税分は50万円になり、合わせて550万円の売却代金を受け取ることができる。つまり、消費税率が8%から10%に上がったことで、10万円の利益が出たことになるわけだ。

販売手数料を取られたとしても、なかなか利回り良い投資ということになる。つまり、投資の面から見れば、消費税が上がると思ったら金は「買い」ということが分かるはずだ。

今回も、消費税引き上げ前には金購入の動きはさらに活発化してくるものと予想される。

一方で、金は消費税だけでなく税金面でいくつかの特色を持っている。自動車は所有しているだけで「保有税」がかかるが、金には保有税がかからない。

また、金を売却して「売却益(譲渡益)」を得た場合には、株投資や外貨投資など、ほかの投資と同じように税金がかかるが、「控除」が認められている。

金を売却して「売却益(譲渡益)」を得た場合は、その実態により「譲渡所得」「事業所得」「雑所得」のいずれかで処理する。

給与所得者などの個人であれば、「譲渡所得」となり、税務上は、ほかの所得と合わせて総合課税の対象となり、所有期間に応じた控除がある。

購入後5年以内に売却した場合(短期所有)には、譲渡益から特別控除分50万円を控除した金額が短期譲渡所得とされ、課税の対象になる。

一方、購入後5年を超えて所有し、その後、売却した場合(長期所有)では、譲渡益から控除分50万円を差し引きした金額を長期譲渡所得とし、さらにその半分の金額に税金がかかる。つまり、5年超持っていれば、税金は半分になるのだ。その面では、金の保有は5年以上が有利ということになる。