平成30年度税制改正案においては、給与所得控除の見直しや事業承継税制の大幅緩和、賃上げ促進のための税制措置などが話題を集めていますが、その他にも多くの改正事項が盛り込まれています。今回は、注目を浴びている改正項目の陰に隠れがちですが、大変ユニークな新税である「森林環境税」にスポットを当ててみましょう。

森林環境税の創設

平成30年度税制改正案では、森林吸収源対策に係る地方財源の確保策が盛り込まれました。
これは平成29年度税制改正大綱において、「市町村が主体となって実施する森林整備等に必要な財源に充てるため、個人住民税均等割の枠組みの活用を含め都市・地方を通じて国民に等しく負担を求めることを基本とする森林環境税(仮称)の創設に向けて、地方公共団体の意見も踏まえながら、具体的な仕組み等について総合的に検討し、平成30年度税制改正において結論を得る。」とされていたことに対する回答です。

パリ協定の枠組みの下における我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や、災害防止を図るための地方財源を安定的に確保する観点から、次期通常国会における森林関連法令の見直しを踏まえ、平成31年度税制改正において、森林環境税及び森林環境譲与税を創設することになったのです。

みどりの保全・創造のための「横浜みどり税」

これらは、環境に配慮した税制の構築といえますが、緑地化や環境整備のため、地方自治体が独自財源としてユニークな税制を創設する例が散見されます。

例えば、横浜市は、平成21年度より「横浜みどり税」を導入していますが、これは、いわば住民税の超過課税と位置付けられるものです。緑の保全・創造による受益は、市民である個人・法人に広く及んでいるため、個人市民税及び法人市民税の均等割の超過課税という課税手法を採用しています(納税義務者は個人市民税及び法人市民税に係る均等割の納税義務者)。また、課税期間については5年とし、定期的に事業効果の検証を行っていくことを予定しているといいます(平成26年度以降も延長されています。)。

横浜みどり税は、個人市民税と法人市民税の均等割に上乗せするものですが、税率は個人900円・法人9%とされています。これは、平成26年度以降の施策である、「これからの緑の取組[平成26-30年度]」のうち、横浜みどり税の使途として適当な4項目に沿って整理した結果算出された必要額、約130億円を基礎に定めたもののようです。

「みどりの保全・創造」という目的の実現を目指し実施される住民税の超過課税ですから、かかる目的を実現するための厳密な支出が担保される必要があります。そこで、税収の使途について一般の財源とは区別して、「みどり保全創造事業費会計」が特別会計として設けられ、その財源として「横浜みどり税」が活用されています。

横浜市では、市域の緑の減少に歯止めをかけ、緑豊かなまち横浜を次世代に継承するために、「樹林地を守る」「農地を守る」「緑をつくる」の3つの分野からなる「横浜みどりアップ計画」の新規・拡充施策に取り組んでいますが、樹林地や農地の多くが私有地であることから、所有者による緑地の保有を支援するとともに、相続等やむを得ない場合には買い取るなど市街地の緑化等を進めています。
この施策を継続して実施していくための安定的な財源として平成21年度から導入しているのが「横浜みどり税」というわけです。

ところで、前述の「森林環境税」は、国内に住所を有する個人に対して課する国税です。その税率は年額1,000円で、賦課徴収は、市町村において個人住民税と併せて行うこととされています。また、市町村は、森林環境税として納付又は納入された額を都道府県を経由して国の交付税及び譲与税配付金特別会計に払い込むこととされています。
2024年度から課税が始まりますが、上記横浜みどり税のような自治体における環境税との重畳的適用が今後残るのか、議論が必要でしょう。