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酒井克彦の「税金」についての公開雑談~復興の象徴としてのチューリップ~

昨年、被災地復興のため、オランダから仙台市へ、同国の国花であるチューリップの球根が寄贈されました。花の色はもちろんのこと、その形や香り、模様など、多くの品種があることで人気を誇るチューリップですが、かつてオランダにて投機バブルを引き起こしたこともある花として有名です。今回はそうしたチューリップにまつわる話をしてみましょう。

復興支援のチューリップ「TOHOKU」

2017年11月、オランダから仙台市へ、チューリップの球根11,000球が寄贈されました。被災地の復興支援を目的に、駐日オランダ王国大使館の協力のもと、同国のアムステルダム市及びアムステルフェーン市より仙台市に寄贈されたこのチューリップは、オランダの栽培業者が開発した新種のチューリップです。

 

このチューリップは、開花中に色がオレンジからピンクに変化するのが特徴で、オランダを象徴するオレンジ色と、日本の桜の色であるピンク色を持つことから両国間の友好を象徴しているとのことです。東日本大震災被災地への想いをこめ「TOHOKU」と命名されました(仙台市HP http://www.city.sendai.jp/koryu/shise/koho/kisha/h25/11/kyukon.html)。

バブルを巻き起こしたチューリップ

チューリップといえば、バブル経済の原点ともいうべきチューリップバブルが有名です。
チューリップは短期間に増やすことが難しい種であったことから、1630年代のネーデルランド連邦共和国(現在のオランダ)において、品薄状態に伴う価格高騰によるバブルが生じました。

そもそも、チューリップの球根を増やすのは難しいといわれています。
チューリップの育成には、種子から育成する方法と、球根である親球から子球を育成する方法(分球)とがありますが、種子から育てる方法によると、花を咲かせるまで3〜7年かかるといわれています。これに対して、親球から子球を育成する方法によれば、その年にすぐ花が咲きますが、親球が作り出す2〜3個程度の子球をさらに親球に成長させるのにしばらく時間がかかります。

このように、育成に時間がかかることに加え、発芽しない種子・親球が少なくなかったこともあって、当時のオランダでの急激な需要増大に生産が追いつかなかったことが、チューリップバブルを引き起こしました。

1634年になると、球根所有が流行となり、激しい投機熱となって庶民の間に蔓延しました。1637年ころまでの時期を「チューリップ狂時代(Tulip mania、Tulipomania)」と呼ぶこともありますが、チューリップ熱は、オランダのハーレム、ロッテルダム、アムステルダム、ユトレヒトに伝播し、球根は市場のみならず宿屋、酒屋などほとんどいたるところで売買されたといいます。取引者たちは球根の値動きをにらみつつ投機したというわけです。

バブルと政府の介入

その後、投資家の多くはチューリップ価格下落による大損失を蒙り倒産し、オランダの商業は大打撃を受けたといわれています(Charles Mackay『Extraordinary Popular Delusions and the Madness of Crowds(邦題:『狂気とバブル―なぜ人は集団になると愚行に走るのか』))。こうした投機熱を冷ますため、当時のオランダ政府は、チューリップ球根への投機を規制することで解決を図りました。

バブルに対しての政府の介入方法は様々ですが、我が国の場合、不動産投機熱を冷ますために、譲渡所得の重課制度が創設されたり、地価税の導入などがなされています。また、さらに遡って明治時代には、うさぎが投機の対象となったおりに、そのバブル熱を冷ますため、うさぎの保有に担税力を見出していわゆる「うさぎ税」が課された時代もありました(課税標準はうさぎ1羽当たり1円でした。)。

さて、上記のようなバブルをなぜチューリップが引き起こしたのでしょうか。チューリップの球根はしばしば「ブレーキング」と呼ばれる突然変異を起こしますが、ブレーキングをおこした球根は、美しい縞模様の花をつけることから人々の関心を呼んだといいます。
そもそも、これはウィルスに感染した球根がモザイク病に罹患したことによるものですが、その仕組みが解明されたのは20世紀になってからです。

美しい花の代名詞といってもよいチューリップは、その価格の暴落によって全財産を失わせるという悲劇も起こしますし、悲劇からの立ち直りの復興の象徴ともなるのですね。

著者: 酒井克彦

中央大学商学部教授 兼 法科大学院教授/法学博士

中央大学商学部教授。法学博士。現在、税務会計論・租税法などを担当。一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。単著に『スタートアップ租税法〔第3版〕』、『クローズアップ保険税務』他5冊のアップシリーズ、『所得税法の論点研究』(財経詳報社)、『裁判例からみる所得税法』、『裁判例からみる法人税法〔2訂版〕』(大蔵財務協会)、『レクチャー租税法解釈入門』(弘文堂)、『プログレッシブ税務会計論Ⅰ、Ⅱ』(中央経済社)、『アクセス税務通達の読み方』(第一法規)など。その他、論文多数。
■一般社団法人アコード租税総合研究所
http://accordtax.net/
■一般社団法人ファルクラム(FULCRUM)
http://fulcrumtax.net/

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