大相撲春場所が3月13日から大阪市のエディオンアリーナ大阪(旧大阪府立体育館)で始まった。見どころは、先場所2006年初場所の栃東以来となる日本人優勝を果たした大関琴奨菊が、2場所連続優勝で横綱になるかどうか。優勝ともなれば、懸賞金や優勝金など多額のお金が入る。力士が受け取る懸賞金や優勝賞金、後援会からの御祝儀などの所得に係る税金はどうなっているのだろうか。
関取を境に収入・待遇に格差
相撲好きな女子を“スー女”と呼ぶなど、「若・貴時代」以来の女性人気の回復も見られる大相撲。大相撲の興行は、「本場所」として年間6場所(1月場所(初場所)、3月場所(春場所)、5月場所(夏場所)、7月場所(名古屋場所)、9月場所(秋場所)、11月場所(九州場所))挙行開催されるほか、本場所がない時期に「地方巡業」が行われる(ここ数年行われていないが海外巡業や海外公演などもあった)。相撲部屋は現在43部屋あり、部屋には師匠、年寄、力士のほかに、行事、呼出、床山、世話人、若者頭などがいる部屋もある。世話人とは、相撲用具の運搬・保管といった管理や相撲場、巡業などでの雑務担当者、また若者頭とは、幕下以下の力士の監督や稽古の指導を行う者のことで、ともに元力士が務める。
力士の地位を順位(番付)でみると、前相撲(番付外)→序の口→序二段→三枚目→幕下→十両となり、最高位は幕内。世間話の中で「力士」と「関取」を混同している人もいるようだが、「力士」は相撲取りの総称で、「関取」は元々大関を指していたが、今では十両以上を指す。関取は、大銀杏を結い、紋付羽織袴に白足袋であるのに対して、幕下以下は、丁髷、着物・羽織で黒足袋となるほか、後に説明するが、ここを境に収入や待遇にも大きな違いが出てくる。
元横綱の若乃花(故・二子山親方)の「土俵には金が埋まっている」はあまりにも有名な言葉だが、実際そうなのか力士の収入とその所得区分を見ていこう。親方(年寄)や力士をはじめ、行事、床山などの関係者の給与等は、(財)日本相撲協会寄附行為施行細則で決められており、力士等の収入についての所得区分に関しては、国税庁が昭和34年3月に発遣した「力士等に対する課税について」と題する所得税個別通達で取り扱いを明らかにしている。
力士は給与制 番付で年に数回改定も
収入をみると、まずサラリーマンと同様に力士も日本相撲協会から給与等が支給される。支給額は、番付で決まることから、給与改定は、年1~2回のサラリーマンとは違って場所後年6回行われることになり、1年の間でも給与変動が大きな力士も出てくる。その給与(月給制)は、以下のとおり十両以上の関取から支給され、幕下以下には支給されない(幕下以下は、別途「力士養成費」が支給される)。賞与は、9月と12月に月給の1カ月分(年間2カ月)支給され、これに三役以上の力士には「本場所特別手当」として、場所あたり横綱20万円、大関15万円、三役5万円(休場日数により減額あり)が支給される。
また、関取となると、月給とは別に本場所の成績によって賞金を受け取ることができるが、その一つが持ち給金とも呼ばれる「力士褒賞金」。これは、支給標準額に支給割合(4000倍)をかけた金額で年6回本場所ごとに支給される。支給標準額は、前相撲を取って出世し序ノ口に上がると、まず3円の給金を得る。その後、本場所の取組で勝ち越すと、勝ち越し1点につき50銭を加算していく。また、地位ごとに横綱150円、大関100円、幕内60円・十両40円の最低支給標準額が定められていて、それぞれの地位に昇進した際に最低額に達していなかった場合は差額が加算される。
さらに、
(1)前頭の力士が横綱を倒した時の「金星」には10円、
(2)幕内最高優勝には30円、
(3)幕内全勝優勝の場合には50円
の特別加算がされる仕組みとなっており、最も多い金星16個を持っていた高田川親方(元安芸乃島)はこの金星だけで毎場所64万円(10円×16個×4000倍)貰っていたことになる。なお、負け越しや休場、不祥事による出場停止などの処分を受けても持ち給金が下がることはないが、降格した場合は昇進当時の差額増加額に相当する金額が減額される。
その他、髪結の補助金である「力士補助金」や出張手当などもあり、これらを含めた給与等については、サラリーマン等と同じ「給与所得」に当たり、源泉所得税の対象となる。