売上操作と税理士
さて、持続化給付金支給の前提として、令和2年1月から12月までの間で事業者が任意に選択した月(対象月)の月間事業収入が、前年同月比50%以下となることが要件となっているところ、不正受給を企む者が、売上の意図的な増減を試みるかもしれません。
例えば、最も簡単な例として、本来対象月の売上として計上すべきものを、翌月(前月)の売上計上とすることが考えられます。また、場合によっては、昨年の売上そのものを変えてしまうこともあり得ましょう。すなわち、昨年の確定申告が「過少であった」として、追加税負担との関わりを考えながら、あえて粉飾修正申告を提出した上で、給付金の要件を充足しようとする者がいるかもしれません。また、それを助言する専門家さえいるとの噂を聞くこともあります(これを「専門家」と呼ぶこと自体憚られますが・・・。)。
とりわけ、税理士は、税務や会計のプロフェッションであることから、かような不正受給に係る粉飾に出くわす機会も、他の専門家に比して多いものと想定されます。それでは、税理士が、顧客の粉飾による不正受給に気が付いた場合にはそれに対して何らかの措置を講ずるべきなのでしょうか。
この点、税理士法は、次のように税理士の助言義務を規定します。
税理士法41条の3《助言義務》
税理士は、税理士業務を行うに当たつて、委嘱者が…国税若しくは地方税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部若しくは一部を隠ぺいし、若しくは仮装している事実があることを知つたときは、直ちに、その是正をするよう助言しなければならない。
売上の粉飾は、このうちの「基礎となるべき事実の仮装」に当たるものと解されますので、税理士には、税理士法の定める助言義務に基づいて是正を促すことが求められると思われます。
税理士が関与する不正受給
では、税理士自体が顧客の不正受給に関わり、アドバイスをしていた場合はどうなるのでしょうか。これに関連する定めとして、脱税相談等の禁止規定があります。
税理士法36条《脱税相談等の禁止》
税理士は不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない。
しかし、この条文を文理に忠実に読めば、不正な税逃れについて指示や相談をしてはいけないということになりますから、あくまでも税の還付ではない持続化給付金の不正受給についてのアドバイスは、同条の射程範囲外ということになるように思われます。
もっとも、そうであるからといって不正なアドバイスが認められるわけはなく、かかるアドバイスは、次にみる税理士法37条によって当然に禁止されていると解すべきでしょう。
税理士法37条《信用失墜行為の禁止》
税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
なお、仮に税理士自身が不正に持続化給付金を受給していた場合には、いうまでもなく信用失墜行為に当たると解されます。
そして、上記のような税理士法の定めるところに違反した場合には、税理士法44条《懲戒の種類》に従って、懲戒処分がなされることになるでしょう(実際に過去の官報を見ると、補助金の不正受給に関与したことを理由に懲戒処分がなされた事例が存在します。)。
コロナ禍に便乗して詐欺まがいの偽専門家が現れていることが懸念される今日だからこそ、真の専門家である税理士等には、高い職業的倫理意識を期待したいと考えます。
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