不正事例をみると、東京国税局管内の相続人Aは、国外送金等の資料より相続開始前5年間に日本国内の被相続人名義の預貯金口座から、海外の被相続人名義の預貯金口座への多額の送金事実を把握したが、相続人の申告に海外資産の計上がなかったことから調査が行われた。しかし、国内調査だけの情報では被相続人の海外資産の保有状況を十分に解明できなかったことから、租税条約に基づき海外資産の保有状況に関する資産の提供を海外税務当局に依頼した結果、被相続人が保有する海外資産が明らかになり相続財産の全容が把握されている(増差課税価格約8.5億円、追徴税額(重加算税込)約1.4億円)。
大阪国税局管内の相続人Bのケースでは、CRS情報により、海外に被相続人及び調査対象者名義の多額の預金の存在を把握し、被相続人の相続財産に海外資産の計上がなかったことから調査が着手された。その結果、相続開始時点で被相続人名義の海外預金口座に残高があることを認識していたが、海外預金であることから申告しなくても把握されることはないだろうと考え、税理士にもその存在を伝えずに申告財産から除外していた。また、Bは本人名義の預金口座の原資についても、過去に被相続人から贈与されたにもかかわらず贈与税が無申告だったことも明らかになった(増差課税価格約13.5億円、追徴税額(重加算税込)約5.3億円)。
新型コロナ感染症は再び拡大していることから、国税当局では引き続き令和元事務年度と同様の手法等により、適正・公平な課税の実現に向けて調査等が実施されているようだ。くれぐれも“調査等が減少しているから自分は大丈夫だろう”とか、“海外で目が届かないだろう”などと考えていると痛い目に合うので、しっかり申告を行いたい。
(資料出典:国税庁 令和元事務年度における相続税の調査等の状況)
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