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国税の滞納残高が29年振りに1兆円下回る 新規滞納額は6871億円

「滞納処分免脱罪」の適用件数7件

これらに加えて、長期滞納事案や財産を隠ぺいするなどの悪質滞納事案については、原告訴訟や滞納処分免脱罪といった法的措置を積極的に利用して解決を図っている。
原告訴訟は、読んで字のごとく国が原告となって訴訟を起こすもので、滞納者が有する売掛金や貸付金、不当利得返還請求権、ゴルフ会員権などを税務署長が国税を徴収するために差し押さえ、弁済期が来ているにもかかわらず第三債務者が税務署長に対して弁済しない場合に、その債権の取立をするための「差押債権取立訴訟」などが利用されている。
27年度は、債権届出等訴訟等131件(同146件)、差押債権取立訴訟15件(前年度15件)、供託金取立等訴訟9件(同7件)、名義変更詐害行為1件(同3件)の合計156件(同171件)の訴訟を提起。前年度からの継続案件を含め148件が終結し、差押債権取立訴訟2件と供託金取立等訴訟での1件の合わせた3件を除き、国側が勝訴して滞納の整理が促進された。

また、滞納処分免脱罪は、国税徴収法第187条に規定されている法律で、国税の徴収を免れる目的で財産を隠ぺい等する悪質事案の告発で適用される。同年度は、過去最高だった前年度よりも1件少ないが7件を告発(法人5社・個人8人)し、裁判で2人に懲役1年(執行猶予3 年)の刑が言い渡されている。
告発事例をみると、運送業を営む滞納法人のケースでは、1億円を超える国税を滞納していたにもかかわらず納付意思を示さなかったため、滞納法人が取引先に対して有していた運送代金債権等を差し押さえた。その後、この滞納法人の代表者から事業を廃業した旨の申出を行ったことから、徴収職員が調査したところ運輸支局に事業廃止届出書の提出の確認が出来なかったため、改めて財産調査が展開された。その結果、滞納法人の代表者が、親族を代表者とする実体のないダミー会社を新設し、実質的に滞納法人の運送事業を継続していることに加えて、取引先に対して社名を変更したなどの説明をした上で、運送代金約2億9千万円を合計105回に分散してダミー会社名義の口座に振り込ませていたことを把握した。この振込先を変更させた行為が、滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠ぺいに該当すると判断し、滞納法人及び代表者を滞納処分免脱罪で告発し、その後起訴されている。

滞納残高は17年連続減少を達成

滞納防止及び整理の促進のための施策の推進・強化により、平成12年以降15年連続で滞納整理額が新規発生額を上回ったことから、平成10年度に2兆8149億円まで膨んだ滞納整理中のものの額(滞納残高)は、今年3月末で3分の1近くの9774億円まで減少し、17年連続で減少するとともに、とうとう昭和61年度以降29年振りに1兆円を下回るまで低下している。

国税当局では、今後も滞納の発生防止と高額・悪質滞納を中心に処理の促進に努めるとともに、前事務年度から試行している小規模税務署から近隣の中心税務署への滞納整理事務の集中化について、28事務年度はさらに14税務署の滞納整理事務を9税務署で行うこととし、その効果を確認して今後の方針を決めることにしており、人員不足を事務量の効率化でカバーを図っていく。

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著者: イーター侍

税金ライター/元税金専門誌編集者

四半世紀以上、税金専門誌の編集者として国税庁、国税局、税務署、会計事務所に出入りする。数年前に独立した後、編集者時代に築いた人脈をいかし、ネットワークビジネスを手がける。その傍ら、趣味と副業を兼ねて税務関係ニュースを追いかける“中年ライター”だ。

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