コロナ禍での納税の特例猶予の期限も経過し、ゼロ金利政策で調達した資金の返済も求められる中での納税対策について、元国税徴収官が分かり易く説明します。

この記事の目次

はじめに

新型コロナウイルス感染症については、令和5年5月8日から感染症法上の位置付けが新型インフルエンザ等感染症から5類感染症に変更され、同日以降は、政府として一律に感染対策を求めることはなくなりました。

これにより「ウィズコロナ」で経済活動が回り始めると想定され、同様に、税務署の徴収事務もこれまでの柔軟な対応から、一歩踏み込んだ滞納処分へと移行することが想定されます。

現に6月下旬には、国税庁から、「新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な納税者の方からの納税の猶予等の申請について、これまで手続きを簡略化する対応を行ってきたところ、本年7月1日以降の猶予申請については、従前と同様の取扱いとする」旨の連絡が税理士会に対してありました。

一方、コロナ禍のゼロ金利政策等で資金調達した小・零細企業が今後、その返済を求められ、資金繰りに奔走する中で納税に苦慮することも想定されます。

特例猶予及び換価の猶予のおさらい

特例猶予は、新型コロナ税特法※1により創設されたもので、猶予の申請が認められると無担保かつ延滞税なしで1年間納税が猶予される制度ですが、その対象は、令和2年2月1日から同3年2月1日までに納期限が到来する国税となっていました。

一方、換価の猶予は、納税者からの申請による猶予と税務署長の職権による猶予の2通りあって、申請による猶予がメインとなっています。

申請による換価の猶予が許可されると、1年間(最長2年間まで)分割納付をすることで、差押処分を受けることなく、かつ、延滞税の利率も低くなり※2負担が少なくて済みます。

※1 新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律

※2 令和5年における延滞税の軽減については、年 8.7%の割合が年 0.9%の割合となります。

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特例猶予適用後の新たな猶予はないのか

特例猶予の許可を受けた場合は、その特例猶予期間の終了日までに申請すれば、換価の猶予または通常の納税の猶予を受けられることもありました。

この特例猶予期間中の延滞税は全額免除され、さらに換価の猶予申請が許可されると、分割納付中の期間の延滞税の利率は低く、延滞税の負担は軽減されていました。

一例を示しますと、納期限が令和3年2月1日の国税を特例猶予申請が許可されると納期限は令和4年2月1日に猶予されていました。

その後、猶予期間までに換価の猶予申請をして認められた場合、令和5年2月1日まで猶予され、再延長が認められると令和6年2月1日まで猶予されます。

ここまでは申請による換価の猶予(国税徴収法第151条の2)の説明ですが、さらに職権による換価の猶予(国税徴収法第151条)があれば令和7年2月1日(再延長1年を加算すると令和8年2月1日)まで猶予が認められることになります。